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求道学舎再生
本の紹介
  • 近角 よう子 (ちかずみ ようこ)
  • 出版社・取扱者 : 学芸出版社
  • 発行年月 : 2008年4月30日
  • 本体価格 : 本体2,400円+税

序章 竣工式の日は
1  求道学舎の生活
2  近角常観と武田五一
3  求道会館の修復
4  築80年求道学舎の悩み
5  新しいしくみを創ろう
6  住まい手を募る
7  建物が喜ぶ改修を
8  設計相談開始
9  工事現場は戦場と化した
終章 見学会の日に
あとがき
主な参考文献

本書は、浄土真宗の僧・近角常観(ちかずみじょうかん)によって東京本郷に創設された学生寮「求道学舎」(きゅうどうがくしゃ)を再生させるドラマを描いたものである。大正期に建てられ、老朽化の著しかった「求道学舎」(鉄筋コンクリート3階建)は、2006年、外観を残したまま内部に大改装を施し、定期借地権付き分譲という新しい方法を導入して蘇った。著者の近角よう子は、近角常観の孫を夫に持ち、「再生 求道学舎」の設計者であり施主であり住人でもある。

本書の中心部分は建築家の視点から「求道学舎」の再生を描くことにあるが、前半3分の1程度は、近角常観の人となりや、「求道学舎」の理念や実際の生活が詳しく紹介されており、仏教的な関心をも大いに満足させる内容となっている。寮生活は、朝晩の勤行や説教、そして信仰に関する闊達な議論などを基調としつつも、決して強制されるものではなく自由な気風が横溢していたようである。

寮の理念については、近角の娘婿で舎監を継承した木村雄吉(東大教授など歴任)の言葉を紹介している。「学問の世界が最終の世界なんじゃないのだよ。南無阿弥陀仏の世界の人として学問もするのでしょう。そのことを知らせ、のみ込ませるのが求道学舎の願いなんですけれどもね」。


評者:石上 和敬(教学伝道研究センター常任研究員、武蔵野大学講師)


掲載日:2008年10月10日