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切手が伝える仏像-意匠と歴史-
本の紹介
  • 内藤 陽介 (ないとう ようすけ)
  • 出版社・取扱者 : 彩流社
  • 発行年月 : 2009年4月28日
  • 本体価格 : 本体2,000円+税

はじめに
第一章 仏像以前
第二章 釈迦牟尼仏
第三章 如来と菩薩
第四章 密教の仏像
第五章 天部諸尊
補-1 羅漢および高僧の像
補-2 神仏習合の尊像
あとがき
索引
参考文献

著者は「切手などの郵便資料から、国家や地域のあり方を読み解く『郵便学』を提唱」(巻末の著者紹介)している異色の若手研究者。本書は仏像を図柄とする300点以上の切手を全頁カラー写真で紹介する、一種の仏像切手図鑑である。また、目次からも窺えるように、本書は構成にも趣向が懲らされており、全体として、ビジュアル資料を通して学ぶ仏教史や仏教概説といった趣さえ感じられる。

紹介される切手の発行地は広範囲に及んでおり、日本やインドをはじめ、タイなどの東南アジア諸国、中国、韓国、モンゴル、さらには、イスラム教国のアフガニスタン(バーミヤーン大仏など)やパキスタン(釈迦苦行像)の切手までも楽しむことができる。特に目を引くのは、日系移民100周年を記念して1998年にキューバで発行された切手で、その図柄の中心は興福寺の薬師如来像である。

切手という媒体を通して、仏教と、発行主体である各々の国家との関係を考えてみることも、本書の一つの味わい方であろう。


評者:石上 和敬(教学伝道研究センター客員研究員、武蔵野大学准教授)


掲載日:2009年7月10日