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観音浄土に船出した人びと -熊野と補陀落渡海-
本の紹介
  • 根井 浄 (ねい きよし)
  • 出版社・取扱者 : 吉川弘文館
  • 発行年月 : 2008年3月1日
  • 本体価格 : 本体1,700円+税

補陀落渡海-プロローグ
熊野への旅
補陀落渡海した人びと
補陀落渡海の遺跡
宣教師が見た補陀落渡海
補陀落渡海の絵画
青海原への憧憬-エピローグ
あとがき

著者は龍谷大学文学部教授。本書は著者が1999年に上梓して話題となった『補陀落渡海史』(法蔵館)をベースに、「日本宗教史上における希有な現象として知られる補陀落渡海」(プロローグ)について一般読者に分かり易く解説したものである。

補陀落渡海とは、南方海上にあると想像された、観音菩薩が住む補陀落への往生を願ったり、あるいはそこを目指して実際に船出する宗教的実践であるが、捨身や入水往生などの面が関心を集めてきたことから猟奇的な営為と見られることが多かった。しかし著者は補陀落渡海に賭けた者たちを「勇猛果敢に『南方往生』を企てた人間の大先輩」(同上)と捉え、文学作品や歴史書を始め、絵画資料なども引きながら彼らの事跡を数多く紹介する。また、補陀落渡海船の構造の持つ宗教的意味についても考察を加えていく。

阿弥陀仏の浄土への「西方往生」と並ぶ、南方往生という宗教的営為の存在に目を向けさせてくれる1冊である。


評者:爪田 一壽(教学伝道研究センター研究員)


掲載日:2008年5月12日