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ヨーガと浄土
本の紹介
  • 立川 武蔵 (たちかわ むさし)
  • 出版社・取扱者 : 講談社
  • 発行年月 : 2008年12月10日

はじめに
第一章  宗教的倫理における否定
第二章  空思想が否定するもの
第三章  ヨーガの理論
第四章  古典ヨーガの行法
第五章  ハタ・ヨーガの伝統
第六章  チャクラのシンボリズム
第七章  自己と他者
第八章  死と浄土
第九章  マンダラとヨーガ
第一〇章 現代思想としての仏教
おわりに
索引

本書は、インド思想研究の大家・立川武蔵氏が「『仏教的立場』からの現代の精神状況への対応」(217ページ)を試みた「ブッディスト・セオロジー」シリーズ(全5巻)の最終巻。

この巻では、「社会の構成員として自己と他者とが存在しているという前提に仏教は立っていないといわざるをえません。このことは、仏教が現代思想として機能する際の克服するべきいくつかの問題のひとつ」(169ページ)であるとして、「ヨーガ」と「浄土」の概念を用いて「自己と他者」の関係を論じる。まず、ヨーガとは「対象を見ている」という心作用をなくして「対象そのもの」となることであると言い、浄土教において他者を受け入れて「自己を自己から脱落させる」方法は、「その(仏の)働きの中へと自己を投げ入れ(中略)はからいを捨てる」(174ページ)ことであると指摘する。

そして、現代の諸問題を解決するために、上記の概念を応用して「他者へと自然に溶け合う自己を思うことが、またひとつの助けにとなってくれるでありましょう」(215ページ)と結んでいる。


評者:鈴木 健太(教学伝道研究センター元研究助手、北海道武蔵女子短期大学専任講師)


掲載日:2009年3月10日