- 出版社・取扱者 : 光文社(光文社新書)
- 発行年月 : 2009年10月20日
- 本体価格 : 本体820円+税
目 次 |
はじめに 第一章 人生は苦である-仏教説話『香の火』『苦しみの器』を読む 第二章 世界をどう見るか-花岡大学『ぞうとはどのようなものか』『すなの しろ』を読む 第三章 苦しみから逃れるためになすべきこと-仏教説話『毒矢の例え』を読む 第四章 無限のつながりが今の私である-花岡大学『美しい眼の王子』を読む 第五章 他人を思う心の大切さ-花岡大学『アマリリスのような おんなの子』を読む 第六章 誰でも良い心を持っている-新美南吉『手袋を買いに』を読む 第七章 人は何のために生きるのか-新美南吉『ごん狐』・芥川龍之介『蜘蛛の糸』を読む おわりに 謝辞 引用・参考文献 |
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著者は神話学や比較文化学を専門とする若手研究者。日本語の覚束ない外国人留学生に日本文化を教授するために仏教童話が極めて有効であると気付いた著者が、日本人にも今一度、仏教童話の奥深さや魅力を是非味わって欲しいと願いつつ、編まれたのが本書である。本書のねらいについて著者は次のように述べている。「子どもが理解できるよう、平明に書かれているにもかかわらず、仏教の中心問題が描かれている仏教童話。本書の一連の物語を通して、私が取り上げようと思っている主なテーマは、慈悲心を育み、菩提心へと至るまでの道のりです」(「はじめに」より)。
紹介される童話は、「毒矢の例え」など仏典の教説を童話化したものから、芥川龍之介『蜘蛛の糸』や新美南吉『ごん狐』にいたるまで、幅広いジャンルにわたっている。また、著者は、各童話ごとに、仏教的観点を交えて興味深くわかりやすい解説を施しており、それが本書の特徴の一つにもなっている。本書の刊行によって、仏教童話再評価の機運が高まるに違いない。
評者:石上 和敬(教学伝道研究センター客員研究員、武蔵野大学准教授)
掲載日:2010年1月12日