- 出版社・取扱者 : 仏教伝道協会
- 発行年月 : 2010年8月15日
- 本体価格 : 本体1,800円+税
目 次 |
まえおき 第一講 死者のために生きる−鎮魂− 第二講 里はみな妙好人だった−遺言− 第三講 アンバランスな世の中だ−咆号− 第四講 煩悩の穢土に浄土願う−軍都− 第五講 非僧非俗に生きる−在家− 第六講 戦争と平和は手のひらくるり−仏心− 第七講 もうひとりの自分がみている−自覚− 第八講 親鸞の教えから無策の策へ−発端− 第九講 いのち溢れて−葛藤− 第十講 生きて往生−不退− (付)松林宗惠最後の講話 松林宗惠の映画全作品 追記 |
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本書は、「和尚」と呼ばれ親しまれた映画監督、松林宗惠氏の90年にわたる軌跡を、毎日新聞元編集委員の大住広人氏が辿った一冊である。
松林氏は代表作「社長シリーズ」「連合艦隊」をはじめ約70本の作品を手がけた映画監督として知られるが、元海軍士官でもあり、また浄土真宗の僧侶でもあった。入社の面接では、「坊さんの学校出てるのか。なぜ映画の会社に?」との質問に、「映画の中に仏教を生かし、仏教の中に映画を生かしたい」と答えた(204ページ)が、仏教を主題にした作品を作ることはなかった。その理由を松林氏は「親鸞を演じられる役者がいない」(271ページ)と一言だけ述べ、その他は語らなかったという。
松林氏は映画監督でありながらも、その根本精神は親鸞聖人のみ教えであった。それは巻末の講話の言葉「南無阿弥陀仏というお念仏、これほどの宝物はない」(296ページ)など、本書の端々に表れている。このように松林氏の言葉には、阿弥陀さまのお慈悲が溢れ出ている。
評者:大江 宏玄(教学伝道研究センター元研究助手)
掲載日:2011年1月11日