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季刊せいてん no.125 2018 冬の号
  • 著者: 浄土真宗本願寺派総合研究所編
  • 刊行年月: 2018/12
  • サイズ: B5判
  • ページ数: 66ページ
  • 価格: 本体637円+税
  • 出版社・取扱者: 本願寺出版社






●特集 「〈空〉がわからない」
  「〈空〉アイスブレイク」編集室
  「固定観念をこわす―龍樹の〈空〉に学ぶ―」新作慶明
  「親鸞聖人が見た聖道門の本当の役割」梯 實圓

〈空〉は、ものごとのありのままの真実をあらわす重要な教えとされています。が、正直にいいます。空、わかりません。空は難しすぎます。なにしろ空を学ぼうとすると、「りんごは有るのではない」「りんごは無いのでもない」「りんごはりんごの樹と同じではないし、違うのでもない」といったような、とらえどころのない説明が次から次に登場するのです。混乱するしかありません(今号の表紙はそのイメージです)。空が本当にわかったら仏さま。凡夫にはわからなくて当然。そう自分に言い聞かせていたこともありました。でも、それでいいのでしょうか。凡夫なりに「わかる」こともあるのではないでしょうか。かつて空に挫折した人、あるいは空をそもそも知らない人、すべての人にお届けする、最も易しい(ことを目指した)空入門です。



●はじめの一歩1 真宗〈悪人〉伝 14 井上見淳
  「金子大榮(中)」

明治時代。宗教界にも到来した新たな時代の扉を開けようとした真宗大学(現、大谷大学)初代学長・清沢満之。「宗教は主観的事実なり」と言い、精神主義をうたった彼は、大学を自由研究の場として形作ると、あまりにも強烈な残像を残して、亡くなりました。彼の精神は、第三代学長・佐々木月樵によって、大谷大学の「樹立の精神」(設立の理念)としてうたわれ継承されました。そのキーマンこそ、金子大榮や曽我量深だったと言えましょう。二人とも熱心な教育活動の傍ら、金子は幼き日からの課題であった「浄土」の解明へ、金子が師兄と慕う曽我は「如来」の解明へ邁進します。しかしながらそうした二人の成果が、それまで大学の学風を好ましく思っていなかった伝統宗学を重んじる重鎮達の怒りを買い、ついには大学の存亡に関わる大問題へと発展していきます。近代仏教界が輩出した聞思の教学者、金子大榮の第二弾です。



●はじめの一歩2 幸せってなんだろう―悪人正機の倫理学― 8 藤丸智雄
  「最大多数の最大幸福―功利主義と菩薩の救い(1)」

どちらを選んでも人の命が失われてしまうような選択を迫られたとき、どうするか。ベンタム(ベンサム)の功利主義なら答えは出せます。しかし、仏教徒としてそれでいいのだろうか…?この非常に重いテーマを、今回から考えてゆきます。「ハーバード白熱教室」で有名なマイケル・サンデル先生と親交の深い小林正弥先生と共に『本願寺白熱教室』を刊行したことのある、藤丸先生ならではの、藤丸版ジレンマです。



●聖典セミナー 『唯信鈔文意』4 安藤光慈
  「〈今〉の救い」

本願寺派司教・安藤光慈先生による『唯信鈔文意』講座。親鸞聖人は阿弥陀仏が臨終に迎えに来るという「臨終来迎」の教えを否定され、信心をいただくその時に往生成仏が決定するという「今」の救いを説かれました。今回、安藤先生は、「迎」を「待つ」と解釈された親鸞聖人のお心を、従来とは異なる視点で読み解き、「今」の救いの意義を鮮明にしてくださいます。前々回(123号)から続く「如来尊号甚分明 十方世界普流行 但有称名皆得往 観音勢至自来迎」の解説、大詰です!



●せいてん誌上講演 「正信偈」24 梯 實圓
  「法然聖人(1) 父の遺言を胸に」

故・梯實圓和上による「正信偈」の講演録。「正信偈」もいよいよ最終盤、真宗七高僧の第七祖法然聖人の段に入ります。親鸞聖人が、「たとえ法然聖人にだまされて地獄に堕ちても後悔しない」と絶対的信頼をよせられたその教えと生涯を、四回にわたって、じっくり、しっかり学びます。



●もう1人の「親鸞」(終) 黒田義道
  「親鸞聖人ご臨終の言葉」

親鸞聖人を慕う人びとに語り継がれてきた伝説的物語に注目し、豊かな「親鸞聖人」のお姿をお伝えしてきた本連載も今号で最終回となります。今回のテーマは、最終回にふさわしく、親鸞聖人の遺書とされる「御臨末の御書」。「一人居て喜ばゝ二人とおもふべし、二人寄て喜ばゝ三人と思ふべし、その一人は親鸞なり…」という一節は有名ですね。この聖人のご臨終のお言葉から、私たちは何を学ぶことができるでしょうか。



●せいてん書道教室 (新) 角屋あづさ
  「4つの四角形をイメージする」

「毛筆、苦手だなー」という方、いらっしゃいますよね。少しでもきれいな字が書けたら、やっぱり嬉しいですよね!!本コーナーは、そんな皆さんのための「書道教室」です。僧侶のみなさんも、門信徒のみなさんも、どなたさまも、ご一緒に学びましょう。まずは、角屋さんが「あっ、こうすれば書きやすい」と感じられた書き方のコツをお伝えしていきます。



●法語随想 (終)  蓮谷啓介
  「かの安楽国土は、阿弥陀如来の正覚浄華の化生するところ…」

「娘が先立ったタイミング、良かったと思うんです」。蓮谷先生のお寺のご門徒が蓮谷先生にこう言われたそうです。「良かった」とは、いったいどういうことなのでしょうか。念仏を依りどころとして生きるご家族のお話、蓮谷先生の法語随想の最終回です。



●読者のページ せいてん質問箱 2 岡本健資
  「〈天上天下唯我独尊〉ってどんな意味?」

仏教・浄土真宗の教えや仏事に関する読者の皆さまの身近な疑問にお答えするQ&Aコーナー。岡本先生には、仏教の教えやお釈迦さまの伝記に関する「知ってるつもり」な質問にお答えいただいています。今回の質問は、お釈迦さまが誕生された時に発したと言われる「天上天下唯我独尊」について。 「世界で、私一人だけが尊い」って、お釈迦さまは傲慢な方だったのでしょうか。インドの言葉で書かれた仏典資料にさかのぼり、この言葉の真意にせまります。



●人ひとみな 物語からであう (終) 吉井直通(ともしえ)
  「二河白道」

影絵を用いた布教を各地で行っている「ともしえ」の皆さんに、影絵作品を一つずつ紹介していただいています。最終回となる今回は、「二河白道」。善導大師のお作りになったドラマチックな喩え話に、ともしえ流のユニークなアレンジが施されています。主人公はたった一人で西に歩んでゆく孤独な旅人。ところがこの旅人、少しばかり困った性格をしているようなのです。旅人の振る舞いを見て、皆様はどのようにお感じになられるでしょうか。



●お寺はいま 横浜市・善了寺・デイサービス「還る家ともに」
  「生と死がともにある日暮らし」

ユニークで工夫をこらした活動を行うお寺や団体を紹介する取材記事。寺院活動のヒントがつまっています。65歳以上の高齢者が総人口の21%を超える超高齢社会となった日本で、お寺が何かできることはないのでしょうか。今回訪問したのは、横浜市の善了寺が宗教法人として運営する高齢者向けのデイサービス施設「還る家ともに」。そこには、生と死がともにあるおだやかな日常の風景がありました。



●西の空 心に響くことば
  「おかげ」(榎本栄一)

心に響く言葉を美しい写真とともに味わう、ほっと一息つくことのできるコーナー。苦しみの中にあると、希望がなくなります。でも歩いていくとまた違う景色が待っている。壁に当たったり、つらい思いをしている人の心に、少しでも余裕ができたら…。素朴な言葉で人生のまことをうたった「市井の仏教詩人」榎本栄一さんの詩「おかげ」です。