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季刊せいてん no.119 2017 夏の号
  • 著者: 浄土真宗本願寺派総合研究所編
  • 刊行年月: 2017/6
  • サイズ: B5判
  • ページ数: 66ページ
  • 価格: 本体637円+税
  • 出版社・取扱者: 本願寺出版社






●特集 地獄と仏
  「地獄と因果論―その意義と注意点」満井秀城
  「地獄と極楽と長い匙(さじ)、と浄土真宗」
  「地獄の聞き方」高田文英
  「もうひとつの地獄の源流―『日本霊異記』の地獄観」
  「〈蜘蛛の糸〉と仏教のつながり」

仏典に説かれていることは様々あれど、直感的な衝撃の強さでは、地獄の凄惨な描写を超えるものはなかなか無いのではないでしょうか。それゆえに、怖いもの見たさ、「死後の世界」ブームの一環、子どものしつけなど、地獄はしばしば世間一般で語られ、人々の興味の対象となってきました。一方で浄土教、ことに浄土真宗において、地獄は、阿弥陀仏の救いと切り離しては語ることのできないものです。それは、この私自身の問題として受けとめてゆくのでなければ意味がないものである、ということでもあります。
地獄。この混沌とした世界の、ごくごく一部ではありますが、お念仏の教えを仰ぎながらうかがってみることにいたしましょう。


●はじめの一歩1 真宗〈悪人〉伝 8 井上見淳
  「唯善(下)」

教団史上「悪者」とされてきた人物たちの人生を通して、ちょっと違う角度から真宗の歴史と教えを学ぶシリーズ。唯善は、親子ほど年の離れた異父兄・覚恵上人の配慮により、困窮の生活を送っていた関東から呼び戻され、京都大谷の地に住むことになりました。この地は元々我が父・小野宮禅念の所有地であり、正当後継者は自分であるはずなのにという強い憤りを抱きながら―。やがて唯善は大谷廟堂を「奪還」するために、常軌を逸した行動に出、ついには、兄弟のような時間を過ごしたこともある覚如上人との対決を迎えることになります。はたしてその結末は……。


●はじめの一歩2 幸せってなんだろう―悪人正機の倫理学― 2 藤丸智雄
  「わかっちゃいるけど、やめられない」

「悪人正機」という特殊性を持つ浄土真宗という宗教を中心に据えながら、古今東西の宗教や倫理学の知見を通じて、「幸せ」について考える連載。「なすべきこと」と「なすべきでないこと」、つまり「善」と「悪」を知ることは、「幸せ」にとって非常に重要なことです。しかし私たちは、善悪を知れば、それに従った行動がとれるのでしょうか。今回は、アメリカのスタンレー・ミルグラム博士が行った「服従実験(アイヒマン実験)」を通して、善悪を「知る」ことと、「行う」ことの違いを考えます。実験が突きつけた、われわれ人間の本性とは。


●聖典セミナー 『歎異抄』10 矢田了章
  「第九条―念仏申し候へども……」

『歎異抄』研究をライフワークとされている矢田了章先生による『歎異抄』講座。今回拝読する第九条は、『歎異抄』の中でも特によく知られた条といってよいでしょう。それは、唯円の赤裸々な告白と、それに対し親鸞聖人が示された意外な応答、そして阿弥陀仏の救いを示されたまことの言葉が多くの人の心をうってきたからだと思います。唯円と聖人との、信仰をめぐる、あたたかくも真剣なやりとりを、じっくりと味わわせていただきましょう。


●せいてん誌上講演 「正信偈」18 梯 實圓
  「善導大師(1) 浄土教を救った高僧」

故・梯實圓和上による「正信偈」の講演録です。今号から「善導独明仏正意」で始まる善導大師の段に入ります。善導大師は、親鸞聖人の教義に非常に大きな影響を与えた、七高僧の中でも特に重要なお方です。大師の教えは『観経』を解釈される中で示されていますので、梯先生は、『観経』の内容も詳しくお話しされます。『観経』入門ともなっている「善導大師」篇、四号にわたってお送りします。『観経』を学びたい方には、必見です!


●もう1人の「親鸞」2 黒田義道
  「比叡山時代の夢告伝説」

「宗祖」として様々に描かれてきた親鸞聖人に関する伝説的物語をクローズアップして、その物語を語り継いだ人々の心をうかがう真宗史入門。学術的に明らかにされている「もう少し知りたい」情報もご紹介しています。今号の物語は、親鸞聖人が19歳の時に、磯長(しなが)の聖徳太子の廟所で感得されたという夢のお告げのお話です。


●ジョード・シンシュー・アイスブレイク(終) タカシ・ミヤジ
  「ありのままに Just As You Are」

アメリカ出身のミヤジ先生が、現地で実際に使われている浄土真宗の言葉をフレンドリーに紹介するコラム。このたび、大谷光淳ご門主の著作『ありのままに、ひたむきに』(PHP研究所)が英訳されました。英訳を担当したのは、そう、ミヤジ先生です。『Moving Forward Just As You Are』というそのタイトルには、どのようなニュアンスが込められているのでしょうか。


●聖典こぼれ話(終) 田中真英
  「フォントのホントの話」

日々、聖典の文字を見つめ続けている総合研究所の聖典編纂担当の面々が、聖典にまつわる興味深くユニークな情報を交代でご紹介していきます。最終回となる今回は、『浄土真宗聖典全書』のタイトルの文字のお話です。筆で書かれたこの文字、実は、○○○○の筆なのです!


●法語随想 悲しみとともに 2 溪 宏道
  「〈帰命〉は本願招喚の勅命なり」

私たちは、大切な人を亡くしたとき、それをどう受けとめたらいいのでしょうか。ただ悲歎にくれるしかないのでしょうか。阿弥陀仏という仏さまは、私にどう関わってくださるのでしょうか。人生の悲しみの中に阿弥陀仏の慈悲を味わう、溪先生のご法話です。


●読者のページ せいてん質問箱 (終) 能美潤史
  「『御文章』の仮名遣いはなぜバラバラなの?」

仏教・浄土真宗の教えや仏事に関する読者の皆さまの身近な疑問にお答えするQ&Aコーナー。担当は龍谷大学専任講師の能美先生です。こんかひも蓮如上人『御文章』の表記お題材にしています―特に前触れもなくこんな表記が出てきたら、さすがに戸惑いますよね。実は、『御文章』の表記にはそのような傾向があるというのです。大丈夫なのでしょうか?


●人ひとみな いろ、といろ 2 とよだまりさ
  「新緑の中で」

NHK連続テレビ小説ドラマ『純と愛』『てっぱん』で絵画指導を行うなど多方面で活躍中の、とよだまりささんのエッセイをお届けしています。とよださんとお話ししていると、いろんな方との、一つ一つの出会いを大切にされているように感じます。「いろ、といろ」というタイトルからは、そんなとよださんの姿勢が伝わってくるようです。


●お寺はいま 島根県大田市・瑞泉寺
  「離郷門信徒の集い」

ユニークで工夫をこらした活動を行うお寺を紹介する取材記事。寺院活動のヒントがつまっています。今回は、「門徒は家族」というスローガンのもと、ふるさとを離れて暮らす門信徒の皆さんとのご縁をつないでいる瑞泉寺「離郷門信徒の集い」を取材しました。


●西の空 心に響くことば
  「くだりざか」(榎本栄一)

心に響く言葉を美しい写真とともに味わう、ほっと一息つくことのできるコーナー。前号から、素朴な言葉で人生のまことをうたった「市井の仏教詩人」榎本栄一さんの詩をお届けしています。今回は「くだりざか」という詩を、黄昏の美しい空にのせて。いくつになってもこんな思いを持てたらいいなあ…。