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第9回「十二礼」 講座の内容
第9回は「十二礼」について学びました。

【座学の内容】

 この「十二礼」を意訳したものが「らいはいのうた」ですので、「十二礼」と「らいはいのうた」は同じ内容となります。それゆえ座学では、第9回、第10回を通して、両者を並行して学びました。
 まず、「十二礼」について、以下の三点に焦点をあてて話しをしました。

(a)龍樹菩薩の作ということについて
 「十二礼」は七高僧の第一祖である龍樹菩薩がお作りになった讃歌です。しかし、「十二礼」は、古い経典録にもその名が見えず、これが単独で成立したものか、龍樹菩薩の著述から抽出されたものなのかについてはよく分かっていません。また、龍樹菩薩の作であるのかどうかを疑問視する意見もあります。
しかし、浄土真宗においては、七高僧の第五祖である善導大師の『往生礼讃』に龍樹菩薩の作であると明記されており、親鸞聖人も龍樹菩薩の言葉として「十二礼」の文を引用しておられるので、淨土真宗では、この「十二礼」が龍樹菩薩の作として伝承され、それぞれの時代の人々が、そのように受けとめてきた事実の方を大切にしておつとめをします。

(b)「十二礼」の構成について
 「十二礼」は一句七字、四句で一偈を成し、全部で十二偈からなる偈頌です。偈頌とは、仏さまのお徳を讃える讃歌です。その内容は、大きく三つに分けてみることができます。第一句「稽首天人所恭敬」から第四句「無量仏子衆囲繞」は、阿弥陀仏・浄土・菩薩の徳を総じて讃嘆する内容で、第五句「金色身浄如山王」から第四十四句「故我頂礼弥陀尊」までは、阿弥陀仏・菩薩・浄土の徳をそれぞれ別して讃嘆する内容となっており、第四十五句から第四十八句は、自分が得た功徳を人々に伝え、ともに往生しようと願う回向句となっています。

(c)「十二礼」と「らいはいのうた」について
 「らいはいのうた」は、昭和23年(1948)の蓮如上人450回遠忌法要の記念事業として「十二礼」の意訳勤行として制作されました。そして現在に至るまで、日曜学校などの少年教化の場で親しまれています。

②龍樹菩薩について

 次に、「十二礼」の作者である龍樹菩薩について、以下の二点について話しをしました。

(a)「空の思想」について
 龍樹菩薩の大きな功績として「空の思想を大成して大乗仏教の教学の基盤を確立した」ことが挙げられます。その「空の思想」について、「縁起」「無自性」「空」という言葉を紹介しながら説明をしました。
 仏教では、すべてのものは関係性のなかで成立している(縁起)ので、自己のみによって単独で成立するものはない(無自性)と説きます。しかし、私達は、煩悩によって我に執われ、本来無自性であるものに対して「有る」とか「無い」と執われています。龍樹菩薩は、「有る」とか「無い」という執われをはなれることが仏教の実践の中心であるということを明らかにして、それを「空」という言葉で示されました。「空」とは単なる理屈でも机上の空論でもなく、実践的な私達のあり方を示すものなのです。
 「空の思想」についてもっと知りたい方には、浄土真宗本願寺派総合研究所で編集をしております『季刊せいてん』(本願寺出版社)NO.125に「〈空〉がわからない」という特集がありますので、ぜひお読みいただきたいと思います。
 http://j-soken.jp/publications/9871

(b)「八宗の祖」と呼ばれることについて
日本では古来より龍樹菩薩を「八宗の祖」と呼び習わしています。浄土真宗では、この「八宗」を、特定の宗派をさすのではなく「あらゆる宗派」という意味であると受けとめます。

③「十二礼」の語句について
 「十二礼」に示される語句のなか、「阿弥陀仙」「両足尊」という聞き慣れない表現について、『真宗大辞典』『岩波仏教語辞典』の解説文をもとに説明をしました。
 また、「奢摩他行如象歩」という句の味わいについて話しをしました。「奢摩他」(しゃまた)とは、「止」や「寂静」と訳される言葉で、散乱した心を離れ、思いを止めて心が寂静になった状態、つまり仏のさとりの境地を表しています。しかし「止」といってもそれは完全に静止しているのではなく、象が歩くように静かに、しかし力強く動き続ける動的なはたらきの側面を持っています。阿弥陀さまは遠く離れたところでじっとしておられる仏さまではなく、常にこの私に向かってはたらきかけてくださる仏さまであるということを、この句から味わうことができます。

【実践の内容】

 実践の時間は、「十二礼」の唱読について学びました。
 初めに、おつとめをする際の心構えなど、これまで学んできたことを復習したあと、「十二礼」のご文を、節を付けずに朗読して味わいました。
 次に「十二礼」の節の基本形をドレミの音階で説明していただきました。「十二礼」は、音階でいうとレ・ミ・ソ・ラの音で構成されています。まず、調声を含む初めの四句は、
 調声 ミ・ミ・ラ・ラ・ラ・ラ・ソ
 同音 ソ・ソ・ソ・ソ・ソ・ソ・ミ
    ミ・ミ・ミ・ミ・ソ・ソ・ラ
    ラ・ラ・ラ・ラ・ラ・ラ・ソ
となります。そして以下は、
    ラ・ラ・ラ・ラ・ラ・ラ・ソ
    ソ・ソ・ソ・ソ・ソ・ソ・ミ
    ミ・ミ・ミ・ミ・ソ・ソ・ラ
    ラ・ラ・ラ・ラ・ラ・ラ・ソ
 のくり返しとなります。これを確認した上で、参加者全員で、「十二礼」の途中までを2回実唱して練習をしました

 次に「我説彼尊功徳事」以降の節について学びました。この箇所を音階で示すと以下のようになります。

・「我説彼尊功徳事」は「ラ・ラ・ラ・ラ・ラ・ラ・ソ」
・「衆善無辺如海水」は「ソ・ソ・ソ・ソ・ソ・ソ・ミ」
・「所獲善根清浄者」は「ミ・ソ・ソ・ソ・ソ・ソ・ラ・ラ」
・「廻施衆生生彼国」は「ソ・ラ・ラ・ミ・ラ・ソ・ラ・ソ・ラ・ソ・ラ・ミ・ミ・レ・レ」

 また、「衆善無辺・・・」から次第にゆっくりとなり、「所獲善根・・・」からは「ウツリ」「カナ上」「タレ」「受下」などといわれるおつとめの技法が入ってきます。また、次第にゆっくりになると、「所獲善根・・・」からは句の途中で息継ぎが入ります。その箇所としては、「所獲善根」で息継ぎ、「廻施衆生」で息継ぎをします。これらのことを踏まえて「我説彼尊功徳事」以降を2回ほど練習しました。
 最後に、本日の説明すべてを踏まえ、「十二礼」全体(短念仏・回向を含む)を通して実唱しました。