HOME > 参加する! > 真宗儀礼講座

第3回「重誓偈」① 講座の内容

【座学の内容】

 「重誓偈」は、『仏説無量寿経』の中にある偈頌(げじゅ=仏さまをたたえる歌)です。経典では、法蔵菩薩が四十八願を述べた直後に示されています。四十八願の要(かなめ)を、重ねて誓われる内容であることから「重誓偈」といい、また、それが三つの誓いとして説かれていることから「三誓偈」ともいわれています。

 

 「重誓偈」全体の流れは次のようになっています。
「我建超世願」~「誓不成正覚」(※十二句目)
  法蔵菩薩の三つの誓いが明らかにされている。
「離欲深正念」~「得為三界雄」

      菩薩の修行に励み、名号と光明の徳によって、多くの苦しむものを救いたいという、法蔵菩薩の願いが述べられている。

    「如仏無礙智」~「当雨珍妙華」
      法蔵菩薩が、自らの願いが完成することを期することを述べ、「重誓偈」全体を総括する。

 

 今回の講座では、第一番目の法蔵菩薩の三つの誓いについて学びました。三つの誓いを要約すると次のようになります。

 

第一の誓い:世に超えすぐれた願いを建て、この上ないさとりを開くことが誓われる。
第二の誓い:苦しんでいるものをひろく救うことが誓われる。
第三の誓い:南無阿弥陀仏の名号を十方に響きわたらせ、人々に施すことが誓われる。

 

 また、その中でも、今回注目したポイントは次の二つです。

 

①「誓不成正覚」について
 三つの誓いにはそれぞれ「誓不成正覚」という言葉が出てきます。その誓いに述べたことが果たし遂げられなければ、「誓って仏にはならない」という意味です。これは、阿弥陀仏という仏さまは、さとりと救いが一体の仏さまであるということを表しています。さらに、親鸞聖人は、「阿弥陀仏は、この私一人を救うために願いをおこして仏となってくださった」と受けとめておられたことを、『歎異抄』の「弥陀の五劫思惟の願をよくよく案ずれば、ひとへに親鸞一人がためなりけり」(『浄土真宗聖典(註釈版)』853頁)のご文を紹介しながら話しをしました。

 

②「名声超十方」について
 第三の誓いにある「名声超十方」という言葉は、「南無阿弥陀仏の名号が、すべての世界に超えすぐれ、そのすみずみにまで届く」ことを誓われたものです。これは、阿弥陀仏の救いのはたらきは、南無阿弥陀仏の名号としてこの私に具体的に届いていることを表しています。親鸞聖人は、これを「正信偈」に「重誓名声聞十方」と示されています。
南無阿弥陀仏の名号には、阿弥陀仏のすべてのお徳がそなわっており、私たちはそれを「聞」という形でいただきます。ですので「重誓偈」では「究竟靡所聞」といい、「正信偈」では「聞十方」と、「聞」ということが示されているのです。この「聞」というのは、単に「音声を耳で聞く」ということではなく、「そこに込められた願いをそのまま受け入れる」ということです。これを浄土真宗では「信心」といいます。親鸞聖人はこのことを「また聞くというのは、信心をお示しになる言葉である」(『一念多念文意(現代語版)』678頁)とお示しになっています。

【実践の内容】

 今回の実践の時間では、初めに、『日常勤行聖典』の「おつとめについて」(4頁)、「おつとめの仕方」(135頁)などを参照しながら、おつとめに関する基本を確認した後、全員で「重誓偈」を通しておつとめをしました。
 まず、「おつとめについて」(4頁)の冒頭に「私たちは、宗祖・親鸞聖人のお心をいただき、阿弥陀如来のご恩徳を讃え感謝する思いから、おつとめ(勤行)をします」とあるように、「阿弥陀如来のご恩徳を讃え感謝する(仏徳讃嘆)」ということが、おつとめをする上で一番の基本となります。おつとめをするにあたっては、このことを大切にしていただきたいと思います。

 

 次に、『日常勤行聖典』の4頁に記されている記号等について確認をしました。

・『阿弥陀経』や「重誓偈」などの偈文では、鼻音(鼻的破裂音)で唱える箇所は「ツ」と、促音で唱える箇所は「っ」というように、ふりがなの表記が使い分けられています。

・「出音 ハ調レ」という表記は、ハ調レの高さで唱えはじめることを意味します。「重誓偈」の場合は「出音 ハ調ミ」と表記されているので、ハ調ミの高さで唱えます。

・「●」は、調声人が一人で唱える箇所であることを意味します。

・「同音」は、一同が続けて唱和する箇所であることを意味します。

・「○」は、鏧(きん)を打つこと意味します。「○○」は二回、「○」は一回というように「○」の数だけ打ちます。鏧を打つ回数は、「一声(せい)、二声(せい)」といいます。おつとめの終わりの鏧は「○○○」というように3回(三声)打ちますが、そのうち中央のみ(二声目)小さい○印になっているので、打ち方としては「強弱強」と打ちます。

・「引」は、二拍で唱えることを意味します。

・「┃」は、唱え方が普通のはやさと異なることを意味します。「重誓偈」では、「誓-不成正覚」という箇所に記されています。ここは「誓」を1.5拍、「不」を0.5拍で唱えます。なお、唱えるときは「せーふ」とならずに、「せーぃふ」と「い」を軽く付けるようにします。

 

 漢字の読み方で注意する箇所については、次のことを確認しました。

・「天光隠不現」の「不」は、かつては「ぷ」と仮名が振られていましたが、現在は「ふ」と発音します。

・「常於大衆中」の「中」は、かつては「ちゅう」と仮名が振られていましたが、現在は「じゅう」と発音します。

 

 次に、『日常勤行聖典』135頁に記載されている「おつとめの仕方」にそって、一連の流れを確認しました。内容は次の通りです。

・お仏壇の前に座ったら心を静めます。

・調声人に合わせて合掌・礼拝します。

・両手で聖典(お経本)を胸の前に持ち、頂戴(額の高さに頂く)してから、胸の前で開きます。経卓(きょうじょく)があればその上に置き、なければ両手で胸の前に保持しておつとめします。

・おつとめは、調声人が初めに鏧(鈴)を二声し、最初の「●」の部分を独りで唱えます。

・参集者は、「同音」から調声人に合わせて唱和します。

・おつとめの最後は、鏧を三声し、胸の前で聖典を閉じ頂戴してから、合掌・礼拝しておつとめを終わります。

 

 その後、以上の説明を踏まえて、全員で「重誓偈」を3回実唱しました。