「一緒に学ぼう西本願寺のおつとめ」は、聖典に説かれている内容を学び、一緒に声を出して唱え方を学ぶ講座です。
『日常勤行聖典』に収められている中から、今年度は、『御文章』について学びます。講座は「座学」と「実践」の二部制で行います。「座学」の時間では、各『御文章』の内容等について、総合研究所の研究職員がやさしく解説し、「実践」の時間では、『御文章』の拝読法、合掌・礼拝などの作法について、おつとめを指導する専門講師が丁寧にお教えします。
第1回『御文章』「聖人一流章」
日時 2021(令和3)年11月4日(木) 10:00~11:30
会場 オンライン(Zoom)
講師 座学 西村慶哉(総合研究所研究助手)
実践 桃園裕成(勤式指導所主任)
人数 38名
当日の内容
【座学の内容】
第1回目は、「御文章の概要」および「聖人一流章の内容」について学びました。『日常勤行聖典』では、122頁・123頁の見開きが今回の範囲です。以下に要点を述べていきます。
1.「御文章の概要」について
「御文章」は、本願寺第八代蓮如上人がご製作されたお手紙(消息)です。例外もありますが、「御文章」では平易な言葉で浄土真宗のみ教えが説き示されており、全国各地の門弟たちに送り届けられました。その数は200通を越え、蓮如上人がいかに精力的に「御文章」を書かれたのかを窺うことができます。
第九代実如上人の頃、全国各地に散らばる「御文章」の中から80通をまとめた、五帖八十通の『御文章』が完成します。現在用いられる『御文章』もこれに当たります(『日常勤行聖典』ではこの中から五通を収録しています)。さらに実如上人は、朝夕の勤行後に『御文章』の拝読を推奨されました。現在でも本願寺派では日常勤行として、正信偈和讃をお勤めした後、『御文章』を拝読するのが基本であると定めています(『浄土真宗必携み教えと歩む』324頁)。
このように『御文章』は、浄土真宗の教えの上でも、儀礼の中でも重要な役割を担ってきました。
2.「聖人一流章」について
「聖人一流章」は、浄土真宗のみ教えの要である、「信心正因」と「称名報恩」が端的に示された「御文章」です。したがって本文も、前半の①「安心(信心正因)」と後半の②「報謝(称名報恩)」とに大別することができます。以下、個別に見ていきましょう。
①信心正因
「聖人一流の」より「入正定之聚とも釈し」までは信心正因をあらわす一段です。最初に、親鸞聖人が明らかにされた浄土真宗のみ教えの特徴は、信心を根本とするものである(信心正因)ことが示されます。「信心正因」とは、私たちがお浄土に往生するための「まさしき因(正因)」は、「信心一つ」である、ということができます。阿弥陀仏の本願である第十八願には、「あらゆる衆生を、信じさせ、念仏を称えさせ、浄土に往生させる」と誓われています。この本願の中心を「信心」に見られたのが親鸞聖人でした。
ただし「信心」とは、私をたよりとするような自力の信を指すのではありません。「聖人一流章」では続いて「もろもろの雑行をなげすてて一心に弥陀に帰命すれば・・・」と示されています。先に述べたように、ご本願には「信じさせ念仏を称えさせ往生させる」と誓われています。「雑行」とはここでは「念仏以外の行」と見ることができます。阿弥陀仏がわれわれにお念仏による往生を誓ってくださったにも関わらず、それ以外の雑行を行ってしまうということは、阿弥陀仏のご本願ではなく、自分の心を信頼しているということになります。ですから、ここで示される信心とは、「お念仏一つで救う」という阿弥陀仏のご本願を信頼する「他力の信心」を指していることを読み取ることができます。②称名報恩
「その上の」より「あなかしこ」までは称名報恩をあらわす一段です。ここでは「その上の称名念仏」つまり信心をいただいた後に称えるお念仏とは、「御恩報尽」の念仏である(称名報恩)ことが簡潔に示されています。
つまり「称名報恩」とは、本願におまかせした上の念仏は、往生が定まった嬉しさから出る御恩報謝の念仏であるということがこの一段では示されています。このことを蓮如上人は他の箇所(蓮如上人御一代記聞書)で、弥陀をたのみて御たすけ決定して、御たすけのありがたさよとよろこぶこころあれば、そのう れしさに念仏申すばかりなり、すなはち仏恩報謝なり。(註釈版聖典1236頁)
(「弥陀におまかせして救われることがたしかに定まり、そのお救いいただくことをありがたいことだと喜ぶ心があるから、うれしさのあまりに念仏するばかりである。すなわち仏恩報謝である」と、蓮如上人は仰せになりました。(現代語版一四頁))と、味わっておられます。このように、浄土真宗においてお念仏とは、「お浄土に生まれるためにとなえる」ものではなく、「お浄土に生まれることが定まった嬉しさのあまりにとなえ出る」ものであると蓮如上人はお示し下さっています。
以上のことを、座学の時間では学びました。
【実践の内容】
第1回目の実践の時間では、主に「御文章」全体の拝読の仕方を中心に学びました。その概要を以下にまとめます。
1.拝読の仕方
本願寺のお御堂で拝読される『御文章』には伝えられた読み方があるものの、日常の勤行では決まった読み方というのはない。どの音から発音(出音(しゅっとん))するというのもない。
しかし、ご文を読み間違ってはならない。聞き手に意味を間違えて捉えられないよう、文章の区切りに気をつける。
2.『御文章』の区切りについて
※『日常勤行聖典』131頁を併せて参照。
①大切(おおぎり)・・・「、」とあるもの。文章の意味がそこで切れる。拝読の際はそこで息継ぎをする。息が続かない場合は、文章の意味が変わらないところで息継ぎをする。
※少し伸ばし、半音ほど下げる。息を吸い込んで次の行へ。
(※引)・・・経本によっては、「大切」の前に「引」という字がついているものとついていないものがある(『日常勤行聖典』にはない)。音を伸ばし半音くらい下げる。「引」は区切りの中に入れないことになっている。言葉に感情がこもる間合いのようなもの。②中切・・・文章の途中にある「・」の印。文節の単語の節目についている。少し手前から段階的に音を下げる。息を続けてもとの音に戻る。読み方に変化をつけていくもの。
③高切(たかぎり)・・・文字の左下にある「、」。少し高くとどめ切る。「また」「されば」など、文章を大きく展開するところで良く使う。
【ポイント】
・御文をしっかりはっきり読む。途中でやめるのはよろしくない。
・読経が終わり、いただいたあと、合掌礼拝。これはお勤めが終わったあとの合掌礼拝。そのあとに再度、『御文章』を頂いて、該当頁を開く。目線を少し下げた位置で御文が見えるように持つ。
・最後の「あなかしこ」で閉じて、次の「あなかしこ」で頂戴し、経本をしまって、合掌礼拝する。
3.「聖人一流章」の唱え方
まずはご文の意味を正確に知ることが大切であるため、素読(すどく)(何もせず読む)を行う。朗読まではいかなくとも、文節がわかるよう読む。「大切」「中切」で音を変えないが、実際に拝読する読み方(右に振ってあるルビ)で読む。
【ポイント】
・「信心をもつて本とせられ候」大切
「せられ」実際は「引」。なめらかに語尾を下げる。・「一心に弥陀に帰命すれば」大切
ここは「引」をつけないようにしているが、つけている人もいる・「不可思議の願力として」中切
「と」の発音中に下がる。「と お↓ し て 」・「仏の方より往生は治定せしめたまふ」大切
「まふ」は「もう」と読む。・「一念発起入正定之聚とも釈し」大切
「発」は前の文字にかかり「ぽっ」と発音。「も」で引。・「そのうへの称名念仏は」中切
「は」は「た」と変化する。・「如来我が往生をさだめたまひし」大切
「め」でさがる・「御恩報尽の念仏と」中切
「ねん ぶっ とー」と段階的に下げる
・「心得べきなり」大切
「こころ-」で引っ張り、「う」は発音しない。
「べきなり」は「大切」だが最後のご文なので完結するように読む。長く引く人もいるが、短く簡潔に終わらせる。・「あなかしこ、あなかしこ」
「べきなり」の下がった音のままで読むべきだが、そうでない方もいる。文字を一つずつ拾うように読んでいく。
以上のことを、実践の時間では学びました。
今回はオンライン開催という初の試みでした。課題も山積していると思いますが、よりよい方法を模索して次回以降に反映できればと思います。
次回は、11/18(木)10:00-11:30です。「信心獲得章」について学んでいきたいと思います。講師は、
座学:溪英俊(総合研究所研究員)
実践:阿満愼照(本願寺式務部知堂)
の予定でございます。次回もご参加をお待ちしております。