「一緒に学ぼう西本願寺のおつとめ」は、聖典に説かれている内容を学び、一緒に声を出して唱え方を学ぶ講座です。
今年度は、「正信偈」の草譜・行譜を中心に学びます。講座は「座学」と「実践」の二部に分け、前半の「座学」の時間は、総合研究所の研究職員が、「正信偈」に説かれている教えの内容について解説し、後半の「実践」の時間は、おつとめを指導する専門講師が、合掌礼拝などの作法や「正信偈和讃」の唱え方についてやさしくお伝えします。
第3回「正信偈」行譜
日時 |
2020(令和2)年12月3日(木) 10:00~12:00 |
会場 |
本願寺聞法会館 3階 研修室①② |
講師 |
座学 塚本一真(総合研究所上級研究員) |
実践 阿満愼照(本願寺式務部知堂) |
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人数 |
29名 |
当日の内容
【座学の内容】
第3回目の座学では、七高僧について讃歎される箇所である「印度西天之論家~唯可信斯高僧説」(依釈段)の内容について学びました。『日常勤行聖典』でいいますと17頁-35頁になります(以下、ページ数だけ表記されているものは、『日常勤行聖典』のページ数を指しています)。
1.七高僧と正信偈
「七高僧」とは、龍樹菩薩・天親菩薩・曇鸞大師・道綽禅師・善導大師・源信和尚・源空(法然)聖人という七名の高僧がたを指します。『日常勤行聖典』「正信偈」の解説では「阿弥陀さまのご本願を信じ、『仏説無量寿経』やインド・中国・日本の七人の高僧の導きによって、お念仏のみ教えにめぐり遇えた喜びを深く感謝されています。」(5頁)と述べられているように、親鸞聖人が七高僧のお導きを深く讃嘆されるのが、今回学んでいく「依釈段」です。
2.七高僧の教え
まず「依釈段」の構成は、おおよそ次のようになります。
①七高僧の全体をたたえられる
→「印度西天之論家~明如来本誓応機」(17頁)
②七高僧のお一人お一人をたたえられる
→「釈迦如来楞伽山~必以信心為能入」(18頁-34頁)
③親鸞聖人のおすすめ
→「弘経大師宗師等~唯可信斯高僧説」(35頁)
以下、個別に見ていきましょう。
①七高僧の全体をたたえられる
「依釈段」では最初に七高僧の全体が讃嘆されます。では、親鸞聖人はどうして数ある高僧方からこれらの七名を選ばれたのでしょうか。
浄土真宗が大切している経典は「浄土三部経」ですが、その中でもっとも大切なのは、『仏説無量寿経(大経)』です。それは、「必ず救う、我に任せよ」という阿弥陀さまの本願がそのままに説かれているからであるといえましょう。
この本願について七高僧は、それぞれの地域・時代によってそれぞれの言葉で説き明かされ、そして、親鸞聖人まで届けてくださいました。その七高僧のお導きを、いま親鸞聖人は讃えておられます。
②七高僧のお一人お一人をたたえられる
「正信偈」依釈段のほとんどがこれに該当します。本講座では時間の都合上、おつとめで節のかわる「善導独明仏正意」(29頁)の一句、すなわち善導大師の功績に注目します。
『日常勤行聖典』では「正信偈」の下段にその意訳である「しんじんのうた」が掲載されています。さて、「善導独明仏正意」の下段をみてみますと、「善導大師ただひとり 釈迦の正意を明かしてぞ」とあります。①では、七高僧がみなご本願を明らかにされたと学びました。しかし、いま善導大師が「ただひとり明らかにされた」と親鸞聖人が讃えられているのは、はたしてどういうことでしょうか。
これは、善導大師が当時の中国の仏教界でただお一人だけ、お釈迦さまがお説きになられた正意を明らかにされたということです。前回「依経段」で学びましたように、お釈迦さまがこの世にお生まれになられた理由は、阿弥陀さまのご本願を説くためでした。しかし当時の仏教界では、阿弥陀さまのお浄土はどのようなところか、またどのような者がどのように修行すれば参ることができるのか、異なる見解が飛び交っていました。その中、善導大師はただお一人、阿弥陀さまのお浄土には、煩悩を抱えた凡夫が、お念仏1つで生まれてゆくという、お釈迦さまの真意を見抜かれました。それで親鸞聖人は、いま「善導独明仏正意」と讃嘆されています。
③親鸞聖人のおすすめ
「依釈段」の最後に親鸞聖人は「ただこの高僧方の教えを仰いで信じるが良い」と述べ、われわれに七高僧の教えを仰信することをすすめられます。
浄土真宗という教えをおいしいご馳走にたとえてみます。その材料とは阿弥陀さまのご本願です。しかし、いくら素材が良くても味付けをしないとおいしくありません。そこで、その時代その地域ごとに味付けをし、調理されたのが七高僧であると考えることができます。その出来上がったご馳走を一緒にいただきましょうと親鸞聖人が仰っているのが、この段落であると言えましょう。
以上のことを、座学の時間では学びました。
【実践の内容】
第3回目の実践の時間では、最初に前回の講座で出た疑問点について、以下のように確認しました。
・調声や同音は蓮如上人のころより用いられていたのか正確には分からない。しかし仏教が中国から公伝された時点で既にあった唱え方である。
・草譜や行譜は、昭和六年に勝如上人継職の時に改訂されたもの。
・念仏・和讃も同様に昭和六年に現行のものに改訂された。
・奉讃大師作法の「正信偈」の唱え方はいわゆる「十二礼の節」。
・お経を唱えるとき、気をつけるべき点、
しっかり芯のある声を出す。音を安定させる。調声の音の高さ、テンポを聞いてそのままの音を出す。音がずれていると気づいたら音を戻す。
等が挙げられる。
・式章のかけ方と用い方について。後ろに紋があるものは、紋が上下さかさになっていないか確認すること。式章は、日本が和装から洋装にかわったときに、礼装がなくなったので、礼装のかたちを残すためのものとして作られた。従って礼装が必要と思う場所には式章を用いると良い。
・『日常勤行聖典』4頁にもあるように、カンマは息継ぎを表す。
その後、「正信偈」行譜および「回向」の唱え方について学びました。以下に要点を述べていきます。
○「正信偈」前半部分について
・草譜より少しテンポを遅く唱えるが、基本的に前半部分はほとんど唱え方に変わりは無い。ただし四句下がりをしない。
・また途中、「中夏日域」(17頁)、「為衆告命」(18頁)、「自然即時」(20頁)の3箇所だけは音が上がるので、注意する。
〇「正信偈」後半部分について
・「善導独明仏正意~開入本願大智海」の四句、「弘経大士宗師等~唯可信斯高僧説」の四句以外は、ほとんど同じ節が基本的に続く。
ただし、「行者正受金剛心」(30頁)「極重悪人唯称仏」(32頁)「還来生死輪転家」(34頁)は4文字目の「受」「人」「死」それぞれ音が上がらないので注意。
・「唯可信斯高僧説」(35頁)は草譜と同じ節で唱える。
〇よく間違う部分
・「矜哀定散与逆悪」(29頁)
「矜哀」は「う」を発音してから音を上げる。「あ」で上げない。
「悪」も、「あ」を1.5拍、0「く」を0.5拍で取る。
・「光明名号顕因縁」(29頁)
「縁」は2拍。4拍にしないよう注意。
・「開入本願大智海」(29頁)
「入」に「ワル」と付されるように、「にう」と発音することを意識。「執心」も同様である(しうしん)。
〇回向句(45頁)
・基本的に1文字1拍のテンポで唱えるが、「徳」はユリで8拍。音がさがりきったところで「く」を唱える。
・「安楽国」は、少しずつ拍を延ばし気味にして唱える。
・同音は「同発菩提心」から経本をたたんでいただくという作法もあるが、自宅で行う場合は最後まで経本をながめても良い。
以上のことを、実践の時間では学びました。
今回が本年度の最終回でございました。ご参加くださった皆さまにおかれましては、新型コロナウイルスが感染拡大状況にある中、ご参加下さり誠にありがとうございました。
今後も、真宗儀礼講座の開催を予定しております。どのようなかたちになるかは未定ですが、詳細が決まり次第、当ホームページにてご案内させていただきます。
来年度も、皆さまのご参加をお待ちしております。