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第9回 公開対談・本願寺茶房「礼法の精神-仏教の立ち居振る舞いを考える-」

仏教音楽・儀礼研究室では、浄土真宗の儀礼について様々な角度から対談する「本願寺茶房」を開催しています。

2018年2月19日 本願寺聞法会館にて開催

 

客人
 
小笠原清忠(おがさわら きよただ)先生

弓馬術礼法小笠原教場・小笠原流礼法
三十一世 宗家

 

著書
『入門 小笠原流礼法』(一般財団法人 礼法弓術弓馬術小笠原流、2014年) 『日本人の9割が知らない日本の作法』(青春出版社、2016年)など

論文

『日本の教育の良さと課題』小笠原流礼法に学ぶ(『学校運営』2015年)など

         
亭主
天岸淨圓(あまぎし じょうえん)先生

行信教校講師・相愛大学講師

 

著書

『御文章ひらがな版を読む』(本願寺出版社、2012年)など

論文

「親鸞聖人の証果論の特色」(『行信学報』2004年)など

 

対談内容

 今回は、客人に小笠原清忠先生をお招きし、「礼法の精神-仏教の立ち居振る舞いを考える-」と題して、亭主・天岸淨圓先生と対談いただきました。

 

 まず、小笠原先生から、礼法についての説明がありました。礼法は、もともと日常生活の中で足腰を鍛えることを目的としており、常に正しい姿勢を保つことが根底にあると紹介されます。

 続いて影像を用い、小笠原流礼法の歩き方、立ち方、座り方、回り方などを説明されました。来場者もその場で、実際に動作を体験しました。天岸先生も、実際にやってみて、鍛錬という意味がよく分かったと言われます。

 

 その後は、動作を行う時に大切な、呼吸について話が展開します。小笠原先生によると、礼法の場合、吸う息で動作を行う。そのように鍛錬をしていると、言葉を用いなくても意思の疎通ができ、まさに「息を合わせる」ことになるのだそうです。

 また、小笠原先生は、無駄を省くことによって美しさを求めるともいわれました。仏教の儀式においても、美しさや息が合うこと、それを心がけることも重要だとされます。例えば流鏑馬においても、姿勢が良よいことが大切である。馬がいくら上下しても、その上に乗っている人間はまっすぐな姿勢で、揺れることなく矢を射ることが大事。そうすると美しく見えると紹介されました。

 

 天岸先生は、私たちは普段、意識せずに体を動かしているが、実は無駄が多い。礼法はそれを日常生活のなかで身につけていくものである。仏教の儀式においても、美しさや息が合うこと、それを心がけることも重要だといわれます。

 

 それに対し、小笠原先生は、伊達政宗公の「この世に客に来たと思え」という言葉を紹介され、この世に客として来たとなれば、だらしないことはできない。仏様にお仕えすることも同じではないか、とされました。

 

 最後に、小笠原先生から、伊勢神宮の御垣内参拝(みかきうちさんぱい:特別参拝のこと)では、ネクタイと上着の着用といった服装についての線引きがある。観光と参拝の区別は難しいかも知れないが、お寺から強制するのではなく参拝される方に意識を持ってもらいたい。また、家に畳がない家も増え、日常的に正座をしなくなった。しかし、お寺にいけば畳があり、そこで正座をする。そのような基本的な立ち居振る舞いということについて、お寺から発信してほしいとも言われました。

 

 天岸先生は、40年ほど前、ご門徒さんと本山にお参りされた時、参拝者は黒の紋付きを着ておられたという体験を紹介されました。そして、だんだんお参りなのか観光なのかという線引きが難しくなってきた。あまり堅苦しくなってもよくないが、参拝ということの意識を醸成することも、今後の課題であるとまとめられました。

 

 お寺にお参りするときや、法要儀式に参加するときの心構えの大切さを、あらためて示していただいた対談であったと思います。