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地獄めぐりの橋
書評
  • 青山 邦彦 (あおやま くにひこ)
  • 出版社・取扱者 : 小学館
  • 発行年月 : 2019年7月30日
  • 本体価格 : 本体1,300円+税

ある寺の井戸は、地獄につながっているという言い伝えがある。それが本当かどうか確かめようと、ある少年が井戸に入っていった。すると、たどり着いた先は地獄。少年は閻魔大王の裁きを受けることになってしまう。浄玻璃(じょうはり)の鏡で悪事を暴かれ、地獄で罰を受けることが決まりかけたが、生者だと判明して罰を逃れる。そして少年は小野篁(おののたかむら)の案内で地獄を見て回り、「地獄がこんなにこわいところだってわかれば、みんなわるいことをしなくなって、地獄にこなくなるよ。」と話すと、小野篁が「そのとおり!だからつくっておるのじゃ、”地獄めぐりの橋”を。生きている人間に地獄をみせるために。」と答えた。それが本書のタイトルになっている。

「悪事をはたらけば地獄に落ちる」という思いは、行いの戒めになる。それが絵本の形で子どもに伝えやすくなったことを、喜びたい。

なお、小野篁(802~852)は実在の人物で、朝廷に仕えていた役人。伝説では、屋敷の井戸を通ってこの世と冥土を往復し、昼は朝廷に、夜は閻魔大王に仕えていたとされる。その井戸は、京都の六道珍皇寺に現存する。


評者:多田 修(浄土真宗本願寺派総合研究所研究員)


掲載日:2019年9月10日