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いまどきの納骨堂 変わりゆく供養とお墓のカタチ
書評
  • 井上 理津子 (いのうえ りつこ)
  • 出版社・取扱者 : 小学館
  • 発行年月 : 2018年10月30日
  • 本体価格 : 本体1,200円+税

はじめに-どうして納骨堂なのか
第1章 墓じまいと改葬の実際
第2章 自動搬送式を選ぶ人たち
第3章 仏壇、ロッカー型と永代供養墓の進化形
第4章 樹木葬の人気ぶりと女性専用墓
第5章 散骨・送骨・0葬ほか知っておきたいこと
おわりに-お墓の未来

現在、各地で新しい納骨堂が建設されている。その現状はどのようになっているのか。従来型の墓ではなく納骨堂を選択した人たちや、寺院など納骨堂を運営する側の人々からの聞き取りなどをもとにまとめられたのが、本書である。書名には「納骨堂」とあるが、それだけではなく樹木葬や海洋散骨など、従来型の墓以外の形式も含まれている。

本書を通して見えてくるのは、葬送に対する意識の変化である。かつて日本では、代々同じ土地に住み、家業を継ぐという生活様式が広く見られた。このような生活様式では、その家で代々続けてきた伝統を受け継ぎやすい。受け継いできたものの中には、信仰や、寺と家の関係も含まれる。しかし今は、子どもが社会人になったり結婚したら、親子で住む家が異なるのが一般的である。その結果、寺と家の関係が受け継がれにくくなった。納骨堂が普及してきたのは、そのような変化に対応したものと言えよう。従来型の墓は先祖から受け継がれ、子孫が受け継いでいくものだが、納骨堂は子孫が受け継ぐだけでなく、一代限りの場合もあり得る。

ただ、遺骨の扱い方が変化しても、故人の遺骨を納める場が求められていることには変わりがない。「故人を悼む」とはどういうことか、考えさせられる。


評者:多田 修(浄土真宗本願寺派総合研究所研究員)


掲載日:2019年12月10日