- 出版社・取扱者 : KADOKAWA
- 発行年月 : 2018年06月22日
- 本体価格 : 本体1,600円+税
目 次 |
第1章 砂漠に響く「天皇陛下万歳」の声 第2章 忠誠登録を拒否した父 第3章 私は「日本人」になる 第4章 栄光の442 部隊 第5章 陸軍抑留所をたらいまわしにされた父 第6章 終戦とノーノ―ボーイたちの混乱 第7章 442部隊の勇者が帰ってきた 第8章 日本に帰ったノーノーボーイたち 第9章 市民権回復・謝罪・補償を求めて 第10章 強制収容の歴史を残す 第11章 証言を残す 第12章 日系人だけがなぜ「強制収容」されたのか エピローグ あとがき |
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「ノーノーボーイ」という言葉をご存じだろうか。
第2次世界大戦中、アメリカに住む日系人は強制収容所に入れられた。収容所では信仰の自由が確保され、布教活動が行われていた。日系人の多くは浄土真宗の門信徒であったともいわれる。
そんな日系人を対象にアメリカ政府による愛国心調査がおこなわれた。アメリカ政府が投げかけた主要な質問は2つ。
「あなたは、合衆国軍隊に入隊し、命ぜられたいかなる戦闘地にもおもむき、任務を遂行する意志がありますか?」
「あなたはアメリカ合衆国に対し、無条件の忠誠を誓い、内外のいかなる武力による攻撃からも合衆国を忠実に守り、日本国天皇あるいは、ほかの国の政府や権力組織に対し、あらゆる形の忠誠や服従を拒否しますか?」
殆どの日系人がノー(NO)と答えなかったのに対し、少数の若者が2つの問いにノーと答えた。2つのノーを選んだことから後に彼らは「ノーノーボーイ」と呼ばれる。彼らは点在する収容所の中でも、最も過酷な自然環境にある収容所に入れられたのである。
本の著者の父はノーノーボーイであった。しかしそのことを多くは語らず逝去した。父の死後、著者は父の足跡をたどりノーノーボーイの実態に迫ろうとする。過酷な施設の中で何が行われ、戦後彼らは何を思い、どう人生を歩んだのか。
同書は写真も多く、読みやすい内容となっている。多数の日系人がいた収容所より、さらに過酷な環境に身を置いた人々に思いを寄せたい。
また、著者は父についてこう述べている。
父の中には、アメリカ合衆国市民としての共通認識である、「自由と民主
主義」「個人主義」の尊重が強くあった。(中略)しかし、日本民族として
生まれ、その集団の中で成長したために、民族の文化も持っていた。
浄土真宗へのこだわりや日本の家、家族への想い。そして結婚相手として
日本人を選んでいるところにそれがみられる。(216ページ)
信仰とはアイデンティティを構成する重要な要素であることが、本書よりうかがえる。