- 出版社・取扱者 : 法蔵館
- 発行年月 : 2017年9月20日
- 本体価格 : 本体3,000円+税
目 次 |
発刊に寄せて(佐藤 平) 発刊の辞(石井 修道) 序 鈴木大拙先生と大悲行(幡谷 明) 序 大乗仏教と菩薩道(佐々木 惠精) 序 鈴木大拙と妙好人研究(築山 修道) 鈴木大拙の妙好人研究(菊藤 明道) はじめに 一 「妙好人」という言葉の意味 二 親鸞における妙好人 三 『妙好人伝』の成立 四 妙好人 石見の浅原才市 五 妙好人を研究・紹介した人々――鈴木大拙・柳宗悦・楠恭 1 鈴木大拙 2 柳 宗悦 3 楠 恭 おわりに 特別掲載 大行――晩年の先生の仕事をお手伝いして―(佐藤 平) あとがき |
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「妙好人」とは、中国の善導大師(親鸞聖人の思想に多大な影響をあたえた「七高僧」の1人)がその著書『観経疏』のなかで念仏者を讃えた言葉である。浄土真宗においては、篤信の念仏者への讃辞である。日本では江戸後期から『妙好人伝』という妙好人の伝記が編纂され、市井の念仏者が国内に知られることになった。
鈴木大拙は、浅原才市をはじめとする妙好人の言行を思想化・体系化し、初めて海外に紹介した。そして鈴木大拙の愛弟子の柳宗悦・楠恭など、多くの人々が鈴木大拙の妙好人研究に関わった。本書は、鈴木大拙だけでなく周辺の人物による妙好人研究の事績をたどったものである。
鈴木大拙は妙好人を「日本的霊性の具現者」と捉えた。「日本的霊性」とは、「二元対立的な分別意識にもとづく一切の相対性、対立、矛盾を包み込み、根底で支えている永遠無限なるはたらき」で、そのはたらきが各人に自覚的に働き出るときを「霊性的自覚(直覚)」と呼ぶ。大戦末期の1944年に鈴木大拙は、その著『日本的霊性』で、日本的霊性の具現者として妙好人をあげ、その宗教心を論じている。とくに浅原才市について、「妙好人中の妙好人」「実質的大哲学者」と高く評価をした。鈴木大拙が浅原才市に関する論考を書くにいたったのは、宗教哲学者・西谷啓治から浅原才市の話を聞いたことがきっかけで、その後、藤秀著『大乗相応の地』を読み、そこに日本的霊性が純粋な形で顕れていると感じたからであった。その後、1948年に『妙好人』で本格的に妙好人を論じるに至る。『妙好人』には、惨禍をもたらした戦争への慚愧と世界平和実現への思いが込められていた。対立・抗争を超えて平和を実現するには、日本的霊性に目覚めることが大切であると鈴木大拙は説いたのであった。
本書は、鈴木大拙の妙好人研究をめぐる思想的営為と人間模様が詳しく知られるとともに、鈴木大拙の平和への篤い思いを感じることのできる一書である。