- 出版社・取扱者 : 本願寺出版社
- 発行年月 : 2016年12月16日
- 本体価格 : 本体1,200円+税
目 次 |
はじめに 春風の刻 新緑の刻 朱夏の刻 白秋の刻 玄冬の刻 おわりに |
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本書は、著者が教鞭をとる京都女子大学発行の仏教新聞『芬陀利華(ふんだりけ)』に掲載されたエッセーをまとめて書籍化したものである。
泥の中より生じながらも泥に染まることなく美しい華を咲かせる、白蓮華(びゃくれんげ)のような貴い人に育ってほしいという思いを込め、著者自身が体験した出来事や、深く感じたことを題材に、やさしく仏教の教えが語られる。
奈良県を流れる葛下川(かつげがわ)の氾濫という災害(起こったのは30年以上前)のなかで、著者の叔父が避難中に目撃した出来事から、私たちの本性を問う「人間の闇」、著者が詐欺にあいそうになった出来事を通して、人間の思い込みの怖さを考える「やってきた男」、その他、仏さまの慈悲やお浄土、釈尊や親鸞聖人の生涯についての話、昔から語り継がれる「王舎城の悲劇」「二河白道(にがびゃくどう)」などの仏教説話、これらバラエティー豊かな文章が、「春風の刻」「新緑の刻」「朱夏の刻」「白秋の刻」「玄冬の刻」と名付けられた章ごとに、色とりどりの季節の移り変わりにあわせて綴られる。
本書に一貫するのは、単に知識として仏教を学ぶのではなく、自分自身がこの世を生きる道しるべとして仏教を受けとめていくということである。それこそが本書に込められた著者の願いであろう。
評者:芝原 弘記(浄土真宗本願寺派総合研究所研究員)
掲載日:2017年7月25日