HOME > 読む! > 仏教書レビュー > 本の紹介

浄土から届く真実の教え-『教行証文類』のこころ-
本の紹介
  • 梯 實圓 (かけはし じつえん)
  • 出版社・取扱者 : 自照社出版
  • 発行年月 : 2015年5月7日
  • 本体価格 : 本体1,000円+税

第一講 法然聖人の教えから『教行証文類』の執筆へ
第二講 いのちの喜びを与える「南無阿弥陀仏」
あとがき

本書は、浄土真宗本願寺派西光寺(大阪)の報恩講法要における法話録である。著者の一周忌にあたり、発行された。報恩講とは、親鸞聖人のご遺徳を偲び、そのご苦労を通して、阿弥陀如来のお救いをあらためて心に深く味わわせていただく法要のことで、浄土真宗の寺院で毎年勤められている。

本書は、親鸞聖人の主著で浄土真宗の根本聖典である『教行証文類』の中核を成す「正信念仏偈」についての法話である。

まず、『教行証文類』の主な執筆の動機として、親鸞聖人が「法然聖人からいただいた正しい教えを正しく後の人びとに伝えよう」(24ページ)と、30年間かけてまとめた書であると定め、この阿弥陀如来の救いを「浄土真宗」というと述べている。

阿弥陀如来は、「あなたを必ず抱き取ってお浄土へ連れていく、だから安心して私にまかせなさいよ」(67ページ)と、自ら「南無阿弥陀仏」いう言葉(念仏)となって、この真実の教えを届けてくれる仏である。そして、浄土は死んで往くのではなく、生まれて往く世界であることを強調している。

また、浄土真宗の生き方やいのちの考え方についても言及していて、まさに念仏に生きた著者の人生そのものが伝わってくる一冊である。


評者:前田 壽雄(浄土真宗本願寺派総合研究所上級研究員)


掲載日:2015年8月10日