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二楽荘史談
本の紹介
  • 和田 秀寿 (わだ ひでとし) 編著
  • 出版社・取扱者 : 国書刊行会
  • 発行年月 : 2014年11月17日
  • 本体価格 : 本体3,600円+税

二楽荘へのいざない(入澤 崇)
二楽荘史談(和田 秀寿・片山 章雄)
 序章  阪神間における郊外住宅地の形成
 第一章 二楽荘前史
 第二章 二楽荘観覧案内
 第三章 二楽荘における教育
 第四章 二楽荘における事業
 第五章 二楽荘と大谷探検隊
 第六章 その後の二楽荘
 注
書き下ろし論考
 二楽荘私的研究史(片山 章雄)
 阪神間モダニズム文化の中の二楽荘(和田 秀寿)
 二楽荘と都市計画について-大谷光瑞にとって二楽荘とは何だったのか(掬月 誓成)
参考資料

大谷光瑞・本願寺第22代門主(1876~1948)の別邸、二楽荘。兵庫県武庫郡本山村(現在の神戸市東灘区)の六甲山麓に建っていた。阪神地区は大阪や神戸に近く、自然条件が良いことから、時代が明治となり交通が発達すると保養地として開発が進み、さらに富裕層の邸宅が次々に建設された。二楽荘はそんな地域の一角にあった。なお、「二楽荘」の名前の由来は公表されていないが、「山と海の二景を楽しむ」の意味といわれる。

二楽荘の建築は、伊東忠太(東京帝国大学工学部教授。築地本願寺本堂の設計者でもある)が「本邦無二の珍建築」と評したように、独特の様式を持っている。二楽荘は1908年に創建、1916年に売却、1932年に焼失と、存在していた期間は長くなかったが、そこでは大谷探検隊がインドや西域(中央アジア)の仏教遺跡から持ち帰った品々の研究や公開、また二楽荘に併設された武庫仏教中学における寺院子弟への教育、さらには気象観測やマスクメロン栽培など、多彩な活動が行われていた。本書は、その様子を当時の写真を数多く交えながら追っていく。

仏教教団というと「伝統的なことを守っている」という印象を持たれ易い。しかし、伝統を守りつつ、先進的なことにも取り組んでいるという(おそらく多くの人にとって意外な)一面が、本書から見えてくる。


評者:多田 修(浄土真宗本願寺派総合研究所研究員)


掲載日:2015年3月10日