- 出版社・取扱者 : PHP研究所(PHP文庫)
- 発行年月 : 2014年6月17日
- 本体価格 : 本体640円+税
目 次 |
まえがき おさえておきたい仏像の基本 仏像だって壊れる 仏像のお医者さん 文化財としての仏像 あとがき |
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著者の飯泉太子宗(いいずみとしたか)氏は、仏像修復を長年手がけてきた。京都の財団法人美術院国宝修理所のスタッフとして勤務していた経験を持ち、現在は茨城県に拠点を置き、関東を中心に活動している。著者は仏像修復にあたって、「文化財を保存するという立場」(まえがき)で、「制作当初のオリジナル部分の保存を主眼とした修復」(同前)に努めている。そんな著者が、仏像修復の現場で感じた雑感をまとめたものである。
本書は4つの章で構成されており、それぞれ「おさえておきたい仏像の基本」、「仏像だって壊れる」、「仏像のお医者さん」、「文化財としての仏像」と見出しがついている。「おさえておきたい仏像の基本」では、仏像の種類、知識、構造、制作の背景について。「仏像だって壊れる」では、仏像が壊れる要因について。仏像のお医者さん」では、仏像修理・復元方法について。「文化財としての仏像」では、仏像を文化財として扱うことで生じる諸問題について述べられている。仏像(修復)について、一通り知ることができる良書である。
「文化財の修理という仕事は、百年先、二百年先を見越して、物づくりをしなければ失格である。」(173ページ)と著者は言う。我々が使用する実用品で、数百年に渡って保存(使用)されるものなど他にないのではないか。そう考えると、仏像修復という仕事が、いかに特殊な世界であるか理解できるだろう。本書を読めば、仏像の見方が変わるかもしれない。仏像を取り巻く深遠なる世界に浸りたい方にお勧めする。