- 出版社・取扱者 : 筑摩書房(ちくま文庫)
- 発行年月 : 2014年6月10日
- 本体価格 : 本体780円+税
目 次 |
「日本人のこころ」を探して 第一部 見えざる日本人の宗教心 大阪は宗教都市である 寺内町という信仰の共和国 現代に息づく「同朋意識」と信仰心 第二部 日本のなかの“異国”を歩く 京都は前衛都市である 磨きぬかれた「市民意識」 伝統と革新のせめぎあいの中で お礼のことば 主要参考文献 |
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「母国である日本のことを、じつはほとんど知らないということに気づいた」(12ページ)と言う五木寛之氏が日本各地を巡り、「日本人のこころ」を探った。その結果、「これまで自分が考えていた日本という国と、日本人という民族のすがたが、ずいぶん違って見えるようになってきた。(中略)そこに浮かびあがってきた日本人のすがたとこころは、これまで想像もできなかつた不思議な世界であった」(13ページ)と語る。本書は、著者が上記の経緯で日本各地を巡り「日本人のこころ」を探った「隠された日本」シリーズの1冊として、大阪と京都を巡る。
一般に大阪は「商業都市」、京都は「伝統的な街」と思われがちである。しかし著者は大阪を「宗教都市」、京都を「日本の中の異国といっていい前衛都市」と言う。このような評価を奇異に思う人は少なくないであろう。しかし本書を読めば、著者の論に納得するはずである。大阪の人々の合理性の背景には、迷信に囚われない浄土真宗の信仰があることを、著者は見抜く。さらに、京都の人々はその当時の新しいものを取り入れる「新しもの好き」「前衛的」な姿勢が古くからあり、現在見られる「伝統」はそれが積み重なった結果だと論ずる。
本シリーズは、各地の人々の生き方を通して、日本人のこころの深層には豊かな宗教性があることを示してくれる好著である。
評者:多田 修(浄土真宗本願寺派総合研究所研究員)
掲載日:2014年11月10日