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醒睡笑 全訳注
本の紹介
  • 宮尾 與男 (みやお よしお) 訳注
  • 出版社・取扱者 : 講談社(講談社学術文庫)
  • 発行年月 : 2014年5月10日
  • 本体価格 : 本体1,700円+税

まえがき
凡例
醒睡笑之序
醒睡笑巻之一
醒睡笑巻之二
醒睡笑巻之三
醒睡笑巻之四
醒睡笑巻之五
醒睡笑巻之六
醒睡笑巻之七
醒睡笑巻之八
解説
あとがき
参考文献 出典一覧・著書・論文ほか

『醒睡笑』とは、400年ほど前の僧侶(浄土宗)、安楽庵策伝による小咄を集めた書物である。策伝は説法するにあたって、面白おかしい小咄を織り交ぜていた。その小咄には、現在も演じられている落語の原形となったものが少なくない。つまり、『醒睡笑』は落語の原点と言える文献である。例えば、本書456ページの小咄は「平林」という名字の読み間違えを題材にしたものであり、これは落語「平林」の原形である。これまでにも『醒睡笑』の現代語訳が出版されているが、抄訳であった。本書は、『醒睡笑』の初めての全訳である。もっとも「全訳」とは言え、底本が異なるため、既刊の抄訳に見られる小咄が本書に掲載されていない例が散見される。一例をあげれば、落語「子ほめ」の原形となった小咄が鈴木棠三訳『醒睡笑 戦国の笑話』(1964年、平凡社)28ページにあるものの、本書は欠いている。

ともあれ、策伝の小咄は単なる笑い話ではない。上述の「平林」の小咄が「とかく推には何もならぬものじや」(まったく推量というものは、当たらないものだ)と結ばれているように、説法の一環であった。『醒睡笑』は、落語だけでなく、説法について学ぶにも有益であり、それが全訳されて接しやすくなったことを歓迎したい。


評者:多田 修(浄土真宗本願寺派総合研究所研究員)


掲載日:2014年10月10日