- 出版社・取扱者 : 法政大学出版局
- 発行年月 : 2013年10月5日
- 本体価格 : 本体3,300円+税
目 次 |
第1章 生を脅かす病 第2章 仏教の病因論と治方論 第3章 交錯する祈療と医療 第4章 看取りと往生 第5章 天皇を看取る 第6章 時衆・遊行聖における病 第7章 絵巻にみる病の図像 第8章 病に向けられた仏教者の目 第9章 薬種の栽培と製薬に励む寺僧 第10章 僧と医師を兼ねる者たち 第11章 沢庵と白隠の医学 第12章 明治の医療政策と仏教 あとがき 索引 |
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本書は、日本医療社会史の専門家である著者が、古代から明治初期までの仏教と医療との広範な、そして多様なかかわりを概観した好著である。
病気に対する仏教からの見方や治療法の概要をはじめ、仏教的な終末期の過ごし方、僧侶による病者への救済活動、さらには僧侶と医師を兼ねた「僧医」という存在の紹介など、テーマは多岐におよんでおり、興味は尽きない。また、資料や絵図がふんだんに紹介されており、専門外の読者には当該分野の一種の読書案内としても有益であろう。
インド以来、仏や菩薩を、その衆生済度の側面に着目して「医王」とも称するなど、仏教と医療とのかかわりは常に意識されてきたと思われるが、実際、日本においてかくも仏教と医療とが深くつながっていたのかと驚嘆させられる一冊である。また、古代・中世以来、国外の知見に接しやすい仏僧たちの立場というものが、ある意味、医療・福祉を先導できた側面もあったことを学ばせていただいた。
評者:石上 和敬(武蔵野大学准教授、浄土真宗本願寺派総合研究所委託研究員)
掲載日:2014年1月10日