- 出版社・取扱者 : 角川学芸出版
- 発行年月 : 2013年1月25日
- 本体価格 : 本体1,700円+税
目 次 |
プロローグ 一枚の写真からはじまる 第一章 哲学者圓了-越後長岡、寺育ち 第二章 妖怪学者圓了-迷信撲滅をめざして 第三章 続妖怪学者圓了-宿敵勢揃い 第四章 宗教改革者圓了-寺院なくして信仰ありや エピローグ 一枚の写真で終わる あとがき 参考文献 索引 |
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井上圓了(1858~1919)とはどのような人物か。本書の目次に沿って答えると、彼は哲学者であり、妖怪学者であり、宗教改革者である。
真宗大谷派の寺院に生まれ育った圓了は、日本に入ってきて間もない哲学に出会う。しかし時を同じくして、仏教の教えに惹かれることとなる。これが「仏教の哲学的理解」という発想へと繋がっていく。そして、経済や法律などの実学が重要視される時代に、哲学を教える学校として哲学館(現東洋大学)を開学する。
さて、そこで圓了は「妖怪学」の講義をはじめる。なぜ「妖怪学」なのか。人々が妖怪と恐れるものは迷信に過ぎない、そんな迷信に惑わされず、客観的・合理的な道筋をつけることが哲学普及につながる、というのが圓了の考えであった。著者はこの背景として、浄土真宗の宗祖・親鸞聖人の迷信に対する考え方があるという。圓了にとって、哲学も妖怪学も仏教も必然的に関係しているのである。
本書で紹介される全国の妖怪、特にヌリカベや鎌鼬などの有名妖怪の登場には胸が躍る。また、圓了に関係する、もしくは影響を受ける、多種多様な有名人の登場も同じく興味深い。同時期に慶應義塾大学を創設した福沢諭吉、圓了に資金的援助をした勝海舟。柳田國男からは批判され、ラフカディオ・ハーンからは賞賛を受ける。時代は下って、水木しげるも京極夏彦も当然圓了を知っている。
本書を読めば、妖怪学について、圓了について、もっと知りたくなるのではないだろうか。ちなみに、圓了は「こっくりさん」を科学的に解明した人物とされる。