- 出版社・取扱者 : 青土社
- 発行年月 : 2011年12月5日
目 次 |
第I部 肉食妻帯と日本仏教 第一章 女犯肉食と肉食妻帯の距離 第二章 肉食妻帯 第三章 <日本仏教>の発生−肉食をめぐる禁忌の形成に関連して 第四章 「仏教の日本化」をめぐって 第II部 肉食妻帯と近代仏教 第一章 「おのづから」と「無戒」−「肉食妻帯」に見る日本人の宗教意識 第二章 「肉食妻帯」問題から見た日本仏教 第三章 日本の仏教にとって「肉食妻帯」とは何だったのか 第III部 殺生と肉食 第一章 殺生罪業観と草木成仏思想 第二章 東国教団における「悪人」たち 第三章 「血食」とカニバリズム−折口信夫の貪婪と快楽 第四章 不殺生戒と動物供犠 あとがきにかえて(三浦 佑之) 初出一覧 |
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本書は日本思想史や比較宗教学を専門とする著者の遺稿集である。「肉食妻帯」とは肉や魚を食べ結婚もすることである。仏教僧の妻帯は戒律の規定に外れることであり、肉食も大乗では禁じられることが多い。しかし日本では僧侶の肉食妻帯は一般的であり、「肉食妻帯」は日本仏教の特徴を語る常套句の一つになってきた。著者はこのテーマを論ずるにあたって、親鸞聖人やその後の真宗教団に多くの関心を注いでいる。
たとえば、真宗教団は当初、肉食妻帯の故に他宗から批判を受けることもあったが、江戸期には肉食妻帯の宗旨であることをむしろ積極的にアピールしていく姿勢を取ったことや、明治初期に国家が僧侶の肉食妻帯を容認したことにより「日本仏教が真宗化」したという指摘など、興味深い分析が随所に見られる。
仏教研究においては、これまでやや扱いにくいテーマでもあった「肉食妻帯」に正面から切り込むことによって、日本仏教や日本思想の本質に迫ることができるのではないかという著者の確信に裏打ちされた一冊である。
評者:石上 和敬(武蔵野大学准教授)
掲載日:2012年06月11日