HOME > 読む! > 仏教書レビュー > 本の紹介

平和の発見 巣鴨の生と死の記録
本の紹介
  • 花山 信勝 (はなやま しんしょう)
  • 出版社・取扱者 : 方丈堂出版
  • 発行年月 : 2008年8月15日
  • 本体価格 : 本体3,000円+税

はしがき
再版のことば
序章 巣鴨の門
第一章 文人の感起
第二章 花とローソク
第三章 東京裁判の二年間
第四章 二十七死刑囚の記録
第五章 巣鴨生活みたまま
第六章 東京裁判の終幕
第七章 七人との面談記録
第八章 昭和二十三年十二月二十三日午前零時一分
第九章 平和の発見
増補 東条元大将の遺言

著者である花山信勝氏は、終戦後の1946(昭和21)年に巣鴨拘置所より戦犯教誨師を委嘱された。東条英機元大将をはじめとするA級戦犯の処刑に立ち会った唯一の日本人でもある。

本書は、著者が戦犯の人々を教誨した記録である。初版は1949(昭和24)年であるが、一昨年に新装復刊となった。著者は、巣鴨拘置所の数々の記録は「『平和』への熱願(ねがい)の記録であり、『生命(いのち)』の発展への法悦(よろこび)の記録である」(はしがき)と言う。そして、教誨を受けて「真理の道を踏んでいった」戦犯者の姿は「人類や、日本の将来にとって、一つの生々しい教訓(おしえ)」であり(334ページ)、そのような戦犯者は「単に懺悔といった境地ではなく、(中略)勝敗もなく、支配も被支配もない、個性もない、平等の『平和』を発見して、きわめて心ゆたかに、安らかに生涯を終えた」(335ページ)と述べている。真の「平和」とはいかなるものかが明らかとなる一冊である。


評者:大江 宏玄(教学伝道研究センター元研究助手)


掲載日:2010年7月12日