- 出版社・取扱者 : ぺりかん社
- 発行年月 : 2006年4月10日
- 本体価格 : 本体5,400円+税
目 次 |
今は昔-日本語版への序文 謝辞 序 第一章 異端の創出-徳川時代の排仏思想- 第二章 異端と殉教に関して-廃仏運動と明治維新- 第三章 儀礼・統治・宗教-大教の構築と崩壊- 第四章 バベルの再召-東方仏教と一八九三年万国宗教大会- 第五章 歴史の創出-明治仏教と歴史法則主義- 結 注 解説(羽賀 祥二・磯前 順一) 文献一覧 索引 |
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本書は、日本における明治時代前半の仏教迫害、すなわち廃仏毀釈に焦点を合わせ、その排仏思想の源流をたどるとともに、迫害を阻止した方法等を詳細に論じている。著者の主な専攻分野は日本宗教文化史・日本思想史であり、現在シカゴ大学東アジア研究センター所長・シカゴ大学史学科教授を兼任している。
まず本書は、富永仲基(とみながなかもと)や平田篤胤(ひらたあつたね)らによる廃仏論、幕末の水戸藩・薩摩藩の仏教迫害にはじまる廃仏運動の実態に迫り、仏教徒がどのようにこの運動に抵抗し、阻止したのかを述べている。特に島地默雷(しまじもくらい)をはじめ多くの仏教者による、国家神道をよりどころとした政教一致体制およびその教化組織(大教院)への抵抗は、信教の自由、政教分離を求める運動へと発展した。このように廃仏毀釈は日本における宗教と宗教的制度の再定義という遺産を残したのであり、ここに近代仏教としての地位が確立されてくると著者は主張する。さらに、1893年にシカゴで開かれた万国宗教大会に日本の仏教者が参加した意義を検討し、明治期の仏教者が何を追求したのか、その真意を探る一冊となっている。
評者:大江 宏玄(教学伝道研究センター研究助手)
掲載日:2009年2月10日