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死生学4 死と死後をめぐるイメージと文化
本の紹介
  • 小佐野 重利 (おさの しげとし)
  • 木下 直之 (きのした なおゆき)
  • 出版社・取扱者 : 東京大学出版会
  • 発行年月 : 2008年9月22日
  • 本体価格 : 本体2,800円+税

刊行にあたって
はじめに(小佐野 重利・木下 直之)
I 死と死後をめぐるかたちとイメージ
 1章 言葉とイメージ-ダンテの地獄と源信の地獄-(小佐野 重利)
 2章 ローマ帝政期の墓における市民の自己表現(パウル・ツァンカー)
 3章 『往生要集』と近世小説-日本における「地獄」イメージの流布-
     (長島 弘明)
 4章 東アジアにおける死屍・白骨表現-「六道絵」と「〓髏幻戯図」-
     (板倉 聖哲)(〓は「骨」の右に「古」)
II 慰霊と追悼の文化と政治
 5章 歌舞伎の慰霊-追善と襲名-(古井戸 秀夫)
 6章 清正公考-死してのち木像と銅像を遺すことについて-(木下 直之)
 7章 長崎平和公園-慰霊と平和祈念のはざまで-(末廣 眞由美)
掲載図版一覧

生と死をめぐる様々な問題を扱う死生学は、近年、広く世間の関心を集めている。本書は、東京大学を中心とした死生学に関するCOEプロジェクト(「死生学の構築」「死生学の展開と組織化」)の取り組みの中から生まれた『死生学』シリーズ(全5巻)の1冊である。死や死後の世界のイメージを人々はどのように表象してきたのか、という問題を中心に、7編の論文が収められている。

造形表現において、「地獄の表現には生々しい臨場感が漲る反面、天国のイメージには東西ともに単調さや空疎さが漂う」(はじめに)という編者の指摘は、全編を貫くものであろう。また仏教的関心からは、日本人に地獄のイメージを定着させたとされる源信和尚(げんしんかしょう)の『往生要集』と、『往生要集』に基づく図像化の代表とされる「六道絵」が、3編の論考において、それぞれ異なる視点から論じられるのが注目される。

なお、死や死後のイメージは当然のことながら、死者の葬送儀礼や顕彰のあり方にも深く関わることになる。後半の3編の論考は主にその問題に当てられている。


評者:石上 和敬(教学伝道研究センター常任研究員、武蔵野大学講師)


掲載日:2009年1月13日