- 出版社・取扱者 : 筑摩書房(ちくま新書)
- 発行年月 : 2008年8月10日
- 本体価格 : 本体760円+税
目 次 |
はじめに 序章 無縁所-駆込寺と難民 一章 叡山門前としての京 二章 境内都市の時代 三章 無縁所とは何か 四章 無縁vs.有縁 終章 中世の終わり おわりに |
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本書は、日本の中世史(平安末~室町期頃)に対する新たな見方を提起する一冊である。著者は東大大学院を修了し、日本中世史を研究してきた。中世史は幕府や朝廷を軸に語られることが多い。しかし著者は、「江戸時代以後の歴史書は、中世史を幕府と朝廷の対立としてだけしか描いてこなかった。その姿勢そのものが根本的に間違っている。(中略)寺社勢力の存在の大きさは、専門家なら知らないはずのない事柄ばかりだ」(135ページ)と批判し、寺社の動向に注目した中世史を描いている。
著者は、社会における国家の割合が中世には極めて小さかったことを指摘したうえで、国家のコントロールが及ぶ範囲を「有縁」、その外の領域を「無縁」、「無縁」の場を「無縁所」と呼ぶ。無縁所は治外法権であり、興福寺・延暦寺は代表的な無縁所であった。しかもこれらの寺社は、強大な経済力や武力を有していた。中世には寺社がなぜこのような勢力を有したのか、そして寺社勢力がどのように社会と関わってきたのかを本書で論じている。
また本書は、親鸞聖人の妻帯について通説とは別の視点から考察を加えていて、興味深い(100~101ページ)。
評者:多田 修(教学伝道研究センター研究助手)
掲載日:2008年11月10日