- 出版社・取扱者 : 岩波書店(岩波現代文庫)
- 発行年月 : 2012年2月16日
- 本体価格 : 本体1,300円+税
目 次 |
序 I 求道と迷道 馬祖禅の核心 表詮と遮詮 驢事と馬事 雪峰と玄沙 雲門の禅・その<向上>ということ 麻三斤 乾屎橛 II 寂室−高潔の禅者 良寛−その詩と人 III 鈴木先生との因縁 敦煌写本の禅文献と鈴木先生のことなど 青木先生の人と学問 吉川先生と中国と私 吉川先生と元曲のことども IV 薬山の没蹤跡 ことばと禅 自知ということ 型からの脱出 明白を嫌って−強靱なる知性の行方 己霊をも重んぜず 好事は無きに如かず 目前の生死 略年譜 解説 初出一覧 |
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本書は1986年に刊行された同名の書(岩波書店)に、「IV」「略年譜」「解説」を増補し文庫化したものである。
著者の入矢義高氏(1910〜1998)は禅の研究者として知られるが、元々は中国語学の研究者であり、禅の典籍の読解では語義の考証に尽力した。禅籍には当時の口語表現が数多く用いられており、著者は禅籍中の「麻三斤」「乾屎橛」などの言葉について伝統的な解釈を再検討し、その時代・地域における用例をもとに、本来の意味を追究した。種々の文献を渉猟、探索し、その時代・地域における用例を元に帰納的に精読するという著者の手法は、現在の漢文仏典読解の標準となっている。その厳密な読解の上に、禅者の思想交流の跡を辿るという作業を積み上げ、更には「ことば」「死」「主体性」「知」「自己と超越」といった人間の根幹に触れる思索の世界を展開する——本書には、そうした著者の研究者としての魅力が横溢している。
巻末の小川隆氏の解説は、やや難解な面もある本書の、優れた導入となっている。
評者:藤丸 智雄(浄土真宗本願寺派総合研究所教団総合研究室長)
掲載日:2012年06月11日