- 出版社・取扱者 : 講談社
- 発行年月 : 2010年6月10日
目 次 |
プロローグ-「前奏曲」として 第一章 戊辰戦争と宗教−権力交代劇の狭間で 第二章 台湾出兵−初めての海外派兵と軍資献納 第三章 西南戦争−日本最後の内戦の中で 第四章 日清戦争−アジアの大国との決戦と軍事支援 第五章 日露戦争−列強との対決と「団結」 エピローグ-「交響曲」へ向かって あとがき 註 |
---|
著者は慶應義塾大学准教授(近代日本政治史・政治思想史・宗教行政史)。
近代日本の戦争と宗教との関わりについては、戦没者の慰霊・追悼の面から多く論じられてきている。しかし、戦争の主体である「国家」に対する「宗教」各派の対応については、昭和期の戦争についてですら「検証、反省、回顧の段階」(プロローグ)にあり、明治期の戦争については未解明な点が少なくない。
本書は、戊辰戦争から日露戦争までの間、戦争に対して、宗教各派がどのように対応したのかを検証する。宗教諸派は、新政府軍への参加、戦勝祈願など、さまざまな行動をとったが、著者は、その行動の背景に「自らの存在意義や正当性の確保・維持、教勢拡大への意欲や、国家的危機に対処する義務感、そして明治国家の脆弱性に対する認識」(あとがき)などがあったと指摘している。宗教各派による戦争への協力はこの後、第二次世界大戦まで継続されるが、本書は、そうした協力態度がどのように形成されたかについて重要な知見をもたらしてくれている。
評者:伊東 昌彦(教学伝道研究センター研究助手)
掲載日:2010年9月10日