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目 次 |
その1 仏教における「悪」−悪人正機/悪人正因− 間狂言1 その2 「悪人」論−空中浮揚とアブラハム その3 宗教と倫理 その4 さらに「宗教と倫理」 その5 常識と宗教 その6 あとがきに代えて <対談> いま、日本の仏教を考える もうひとつのあとがき(釈 徹宗) 文庫版あとがき(釈 徹宗) |
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本書は、内田樹氏(神戸女学院大学名誉教授)が浄土真宗を学ぶにあたり、釈徹宗氏(如来寺住職、相愛大学教授)と交わした往復書簡を書籍化した『インターネット持仏堂2 はじめたばかりの浄土真宗』(本願出版社、2005年)の文庫化である。
内田氏は「浄土真宗の中心的論件」(35ページ)として悪人正機を取り上げ、宗教的な「救い」の対象と自らを自覚した悪人の行為が、必ずしも「倫理」的ではない側面を問題とし、釈氏との対話が深められていく。両氏とも、自身の自由な想いから文章が展開するため、多々脱線はするものの、「宗教と倫理」を中心に語られる大変興味深い内容である。また、内田氏の思想に対し、釈氏の返答には浄土真宗的「倫理」感の紹介もなされている。
「はじめたばかりの」と題目に掲げられているが、奥深いところにも話が及び、読んでいて考えさせられる箇所も少なくない。しかし、両氏の口調そして書簡という性質上、読みやすく手軽な本となっている。
評者:網代 豊和(浄土真宗本願寺派総合研究所研究助手)
掲載日:2012年08月10日