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煩悩を断ぜずして涅槃を得るなり

煩悩(ぼんのう)を断ぜずして涅槃(ねはん)を得るなり

(「正信偈」『註釈版聖典』203頁)

現代語訳

自ら煩悩を断ち切らないまま、浄土でさとりを得ることができる
(同『現代語版聖典』144~145頁)

 

仏教一般では、さとりを得るためには煩悩(身と心とをまどわす欲望やいかりなど)を取り除いていく必要があるとされます。ところが親鸞さまはさとりを得るためには煩悩をなくす必要はなく、煩悩を抱えたままのわたくしがそのまま仏さまに救われるのだとおっしゃるのです。一見矛盾がありそうな言葉ではありますが、これは「自分の問題点をみつけて、この問題点が悪いので、これをなくしましょう」というのではなく、その問題点を問題点として見ないことに大きな意義があるかと思います。自分の問題点に悩み苦しんでいる人に対して、悩み苦しんでいる姿を受け入れて「無理しなくていいよ、そのままでいいんだよ」と語りかけている仏さまのぬくもりがこの言葉から伝わってきます。日頃の私たちの生活では、「あっちがいい、こっちが嫌い」という「心」の色眼鏡をつけて人やものを見てしまっています。しかし、それらの思いが叶わないところに私たちの苦悩があり、また欲望の増える原因があるのです。煩悩をたずさえて、それをなくすことのできないのが私たち人間であり、この言葉は人間の本質をみごとに見抜かれた親鸞さまの教えのエッセンスそのものといえるのではないでしょうか。

 

文・野村淳爾
2014(平成26)年3月