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別離に向き合う姿勢

別離に向き合う姿勢
―総合研究所ブックレット発刊にあたって―

このたび、総合研究所が進めている自死問題への取り組みの一貫として、『大切な人を亡くすということ~自死・葬儀・グリーフケアを考える~』(本願寺出版社)を刊行しました。本書は、自死・葬儀・グリーフケアなど、大切な方を亡くしたご遺族の「別離」にまつわる悲嘆をいかに支えるか、をテーマとし、3名の先生方の講演を掲載しています。

 

  • ・鷲田清一氏:自殺対策フォーラム「生きることの支援―いま、京都からの発信―」(2010年2月5日)
  • ・尾角光美氏:第五回別離の悲しみを考える会(2010年7月12日)
  • ・橋爪謙一郎氏:第六回別離の悲しみを考える会(2010年12月1日)

 

新聞やテレビなどで報道されているように、日本における自死をめぐる現状はきわめて深刻です。昨年2012年の自死者数は25754人(警察庁統計)であり、毎年3万人を超えて推移していた状況からやや改善しましたが、10代・20代の若い世代の自殺率は非常に高い状況が続いています。とくに、15~34歳における死因の第1位は自死であり、これはアメリカ・フランス・ドイツなど先進7カ国のなかでは日本のみとなっています。近年では、厳しい就職活動に疲れ、絶望を感じた学生による自死もしばしば報道されており、若い世代の「生きる」を支える取り組みが急務となっています。

 

また、大切な人を自死で亡くされた方の存在も忘れることはできません。一人の方の自死は、身近におられた5名から10名もの方々に深刻な影響を与えるといわれています。自死のご遺族をいかに支えるか、という点も宗教者の大きな役割の一つです。本書では、こうした自死にまつわる別離に直面した方に対する、具体的なサポート方法や、向き合う姿勢について詳しく触れられています。

 

3名の先生方のご講演に共通するのは、「傾聴」や「グリーフ(悲嘆)」「寄り添い」といった、近年注目されている対人支援の諸概念について解説されるとともに、決してそれらを一般化したり、定義づけるという方向ではなく、きわめて具体的な事例をもとに、「一人ひとりが抱える個別の苦悩」に焦点をあてた内容となっている点です。

 

私たちはしばしば、年間約3万人という「数字」に気を取られ、その「3万人」という数字を減らすべきであると考えがちです。しかし、3万人という数字は、実は「3万人が亡くなられた」という客観的な数値を示したものではなく、さまざまな苦悩のなかで亡くなっていかれた「一人の方の死」が3万件存在した、ということでしょう。「死にたい」と思い悩む一人ひとりの個別の方々がおられた、ということそのものをしっかりと見据えること、そうした個別の生死そのものに焦点をあてた支援のあり方こそ、自死やグリーフケア、そして震災をめぐる苦悩や悲嘆を支える際に、きわめて重要になってくるのではないかと思われます。このブックレットが、そうした苦悩を支える際のヒントの一つとなればと念願しています。

文・野呂靖

2013(平成25)年7月