Ⅵ-0005一枚起請文 源空述 もろこし・我がてうに、もろもろの智者達のさたし申さるゝ觀念の念にも非ず。又學文をして念の心を悟りて申念佛にも非ず。たゞ往生極樂のためには南無阿彌陀佛と申て、疑なく往生するぞと思とりて申外には別の子さい候はず。但三心・四修と申事の候は、皆決定して南無阿彌陀佛にて往生するぞと思ふ内に籠り候也。此外におくふかき事を存ぜば、二尊のあはれみにはづれ、本願にもれ候べし。念佛を信ぜん人は、たとひ一代の法を能々學すとも、一文不知の愚どんの身になして、尼入道の無ちのともがらに同して、ちしやのふるまいをせずして、只一かうに念佛すべし。[爲證以兩手印] 淨土宗の安心・起行、此一紙に至極せり。源空が所存、此外に全く別義を存ぜず。滅後の邪義をふせがんが爲めに、所存を記し畢。 建曆二年正月二十三日 源空(花押)